問題が指摘された産経新聞の沖縄報道(「産経ニュース」より)
「デマ製造新聞」「ネトウヨまとめ新聞」と揶揄される産経新聞が、またもインチキ記事を掲載・拡散していたことがわかった。この事実を伝えたのは、本日付の琉球新報だ。
問題となっているのは、昨年12月1日に沖縄市知花の沖縄自動車道で起こった米軍の人身事故にかんするニュース。翌2日に琉球新報は、県警交通機動隊の情報をもとに〈米海兵隊曹長の男性(44)が前方の車と接触事故後、車外に出たところ米海兵隊2等軍曹(28)の乗用車がはねた。曹長の男性は頭蓋底骨折などのけがを負い、意識不明の重体で、本島中部の病院に搬送された〉と報道。沖縄タイムスも同様に伝えている。
だが、同月9日になって、産経ニュースが「【沖縄2紙が報じないニュース】 危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー」という6ページにもわたる長文の記事を配信し、〈クラッシュした車から日本人を救助した在沖縄の米海兵隊曹長が不運にも後続車にはねられ、意識不明の重体となった〉と報道。日本人を救出した曹長はヘクター・トルヒーヨ氏だとして、トルヒーヨ曹長の妻・マリアさんのFacebookの投稿と、米第三海兵遠征軍の担当官のコメントをその裏付けとしていた。
そして、産経記事では、この「事実」を伝えない琉球新報と沖縄タイムスの2紙をこのように批判したのだ。
〈「米軍=悪」なる思想に凝り固まる沖縄メディアは冷淡を決め込み、その真実に触れようとはしないようだ〉
〈沖縄県のメディアはなぜ、こうも薄情なのだろうか。それでも事故後、この「報道されない真実」がネット上でも日増しに拡散されている。「続報」として伝えることは十分可能だが、目をつぶり続けているのである〉
さらに、新報・タイムスが12月1日に米軍属による女性強姦殺人事件の公判で無期懲役となった件を1面トップで伝えたことを取り上げ、〈被告が「元米軍属」「元海兵隊員」ではなく「日本人」だったら、どうだったろう〉などと言い出し、〈米軍の善行には知らぬ存ぜぬを決め込む〉と非難。以下のようにまくし立てた。
〈「報道しない自由」を盾にこれからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ〉
報道機関を名乗る資格はない、日本人の恥──。この記事が配信されるや否や、ネット上では新報・タイムスを批判する投稿が相次ぎ、「偏向報道の実態」として拡散。さらに産経は12月12日に本紙でも「車事故で男性助け…自身は、はねられ重体 日本人救った米兵 沖縄2紙は黙殺」と同様の論調の記事を掲載した。
しかし、この産経が事実として断定的に伝え、沖縄2紙の批判材料にした「トルヒーヨ曹長が日本人を救出した」という話を、当の米海兵隊ならびに沖縄県警が否定。米海兵隊は琉球新報の取材に対して「(曹長は)救助行為はしていない」と回答し、沖縄県警も「救助の事実は確認されていない」としたのだ。