海外メディアとは対照的、山口の事件をスルーする日本の新聞・テレビ
だが、欧米メディアがこうした女性の性被害をめぐる日本社会の状況を大きく問題視するなかで、国内のテレビメディアは、とりわけ山口氏の事件についてはほとんど沈黙している。詩織さんの会見の模様こそ一部テレビが報じたが、逮捕が直前で取りやめになったことや山口氏が安倍首相や官邸と近い人物であることを掘り下げないのはもちろん、たとえばNHKは年末に「#MeToo」運動をニュースでとりあげても詩織さんについては一切触れなかった。
詩織さんの著書『Black Box』(文藝春秋)によれば、山口氏が書類送検されるというタイミングで日本テレビのインタビューを受けていたというが、送検後も放送されることはなく、「不起訴になったら報道する」と言われたが、その後も日テレがこの事件を報じることはなかった(日テレは記者会見当日の中継で初めて報じた)。
詩織さんは前述の「ポリティコ」に寄せた手記(1月2日)のなかで、このように語っている。
〈逮捕が取り消されたとき、私にとって唯一残された手段はメディアに語ることだと思いました。私は信頼するジャーナリストに話しました。結局、昨年前半の「週刊新潮」の報道以外に、この話を報じたところはありませんでしたが。政治的にセンシティブだったにせよ、日本のメディアは普段から性犯罪に沈黙しています──(日本のメディアにとって)性犯罪というは本当に“存在しない”のです。
“レイプ”という言葉を使うのすらタブーで、もし被害者が未成年だったら“(条例等の)違反”あるいは“いたずらされた”という言葉にしばしば置き換えられます。これは人々を無知にさせます。〉
日本では、性被害を告発した女性に対するセカンドレイプやバッシングが横行し、男性優位社会に根ざす「レイプ神話」が、女性の発言を封じ込めようとする。そして、国内メディアはそうしたことを知りつつも、レイプ問題をタブー視し、積極的に問題を報じようとしない。
海外メディアの山口氏準強姦疑惑をめぐる大々的な報道と日本社会への批判を読んで、日本のマスコミ関係者は恥ずかしくないのか。
(編集部)
最終更新:2018.01.29 01:51