“政治的炎上案件”となってしまった流行語大賞
それはネット上だけにとどまらなかった。『ワイドナショー』(フジテレビ)ではMCの東野幸治やコメンテーターの松本人志が「I am not ABE」が入っていることを疑問視。爆笑問題・太田光も『爆笑問題 カーボーイ』(TBSラジオ)において、「安倍さん関係が多すぎるんだよ。安保関係が」「全部、安保関連だよ」「『早く質問しろよ』なんて別に流行語にしなくてもいいじゃない」と批判した。
そして、昨年には、「保育園落ちた日本死ね」がトップテン入りしたことに対して、「死ねってヘイトスピーチだろ」「どこで流行ったの?」などとネット上で炎上。さらに、つるの剛士が〈こんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました〉などとツイッターに投稿し、批判はさらに加速したのだった。
こうした経緯を考えると、流行語大賞が「政治的炎上案件」となってしまったため、多くの有名人が授賞式参加を避けたのだろう。しかも、今年の流行語の年間大賞は「忖度」が選ばれるだろうと誰もが予想しており、炎上は目に見えていた。
本サイトでは流行語大賞が2015年に炎上した際、新語・流行語大賞は、設立された1984年の第1回から中曽根康弘首相(当時)の「鈴虫発言」を銀賞に選ぶなど、「政治の言葉」を数多く大賞・候補語に選んできたことを紹介し、世相を反映させようとすれば時の政治に対して風刺・批判的な言葉が入るのは当然のことだと論じた。むしろ、「政治色が強い」だの「批判に傾きすぎ」だのといった批判が起こること自体が異常で、安倍政権批判を許さない人びとによる過剰反応でしかない。
実際、今年の年間大賞となった「忖度」をめぐっては、コンビニ弁当にまで炎上が飛び火している。流行語大賞発表と同じ日からファミリーマートで販売されている「忖度御膳」だ。
忖度御膳は11月にツイッターでおこなわれたアンケートでアニメ『けものフレンズ』をモチーフにした弁当の約2倍となる6万票以上を獲得し商品化されたもの。だが、これに早速噛みついたのが、「森友・加計疑惑は陰謀」とネトウヨそっくりの陰謀論を国会で振りまいた義家弘介・前文科副大臣だった。
義家前副大臣は弁当発売と同日の財務金融委員会で、冒頭から忖度御膳の話題を取り上げると、こんなことを言い出した。
「そもそも忖度という言葉は歴史がたいへん古うございまして、日本では10世紀から用いられている記録がございます。本来、この言葉は人の気持ちを推し量る、日本独特の、日本文化の特徴」
「しかしマスコミ報道、これ影響は絶大でございまして、いまネガティブな言葉、あるいはバラエティワード、キャラクターワード、そんなふうに使われていることが残念でなりません」