イヴァンカは“女性の社会進出の象徴”などではない
日本のメディアは、イヴァンカ氏が自らファッションブランドを立ち上げ、トランプの右腕として活動することをやたらクローズアップし、「自立したキャリアウーマン」「辣腕女性実業家」などと報道しているが、アメリカのメディアでは「イヴァンカは父親の金でビジネスをしているだけ」「むしろ保守的な女性の価値観を体現している存在」という論調のほうが一般的だ。今回のシンポジウム出席についても、「イヴァンカは女性の社会進出と無関係なのになぜ」とする論調もあった。
また、イヴァンカ氏は4月にドイツ・ベルリンを訪問、G20の各国の女性政府要人らとともに「W(ウーマン)20サミット」にも出席しているが、司会者から「あなたの役割や代表しているものは何なのか。大統領としての父親か、アメリカ国民か、それともあなたがたのビジネスか」と問うなど、大統領の娘というだけで重要ポストに就き“活躍する女性”を代表しているかの振る舞いに大きな批判の声があがった。
さらに、ベルリンでの「W20サミット」で批判されたのが、トランプの女性に向けた数々の侮辱や蔑視発言に対するイヴァンカ氏の姿勢だ。AFPBB Newsによれば、この席上、「あなたの父が公の場で示してきた女性への態度の中には、彼が女性の地位向上を後押しする人物なのか、疑問を呈するものもあるかもしれない」と質問されたイヴァンカ氏は「家族を支え、その成長を助ける素晴らしい擁護者」「父が民間にいた数十年間、何千人もの女性たちが父と共に、そして父のために働いてきた。これは、女性の可能性とどんな男性にも劣らない職務能力を父が信じ、信頼している証拠だ」などと父親を完全擁護、そのため会場から不満と笑いの声があがった。
ところが、安倍首相は海外ではむしろ、「女性の敵」とさえ見られているイヴァンカ氏を国賓扱いして、女性問題をテーマに開かれている国際会議に参加させ、安倍首相はわざわざ「イヴァンカさんの主導した基金を強く支持して、資金を拠出する」などと、まるで自分とイヴァンカがこのプロジェクトの中心にいるかのように宣伝をしたのだ。
いくら“トランプの忠実なポチ”だとはいえ、よくもまあ、こんな露骨なご機嫌取りができたものではないか。
もっとも、前述した国内政策でもわかるように、安倍首相自体、本当は「女性の社会進出」や「自立支援」などということを本気では考えているわけではない。安倍政権が実際に推進している政策を見れば、むしろ伝統的な家族観を押し付けるスタンスであることは明らかだ。そういう意味では、イヴァンカ氏とは「女性の味方」を偽装するフェイク同士として、フィーリングがぴったり合ったということかもしれない。
そして、明日5日、今度はネトウヨ、差別主義者的な感性がぴったり合う父親のほうが来日する。娘のイヴァンカ氏にさえこんな調子だったのだから、安倍首相がこれまで以上に“トランプのポチ”ぶりを発揮するのは火を見るより明らかだろう。安倍とトランプがいったいどんなグロテスクな会話を世界に発信し、どんなとんでもない約束をかわすのか。想像するだけで恐怖である。
(編集部)
最終更新:2017.11.04 02:21