「基地反対派はIS(イスラム国)」というトンデモデマまで流布
こうした印象操作のやり口は、百田以外にも、ネトウヨや極右文化人連中が得意とするところだ。たとえば、ネトウヨユーチューバーのKAZUYAこと京本和也は、「週刊新潮」(新潮社)での連載のなかで、基地反対活動について〈何なら県外と言わず国外からも活動家が押し寄せているのです〉としてこう書いていた。
〈今回(辺野古)テント村では北朝鮮との関係を匂わせるものを発見しました。それは韓国の朴槿恵前大統領打倒派が使っていたスローガンが書かれている座布団です。「下野しろ」と書かれています。なぜこんなものが沖縄の活動家のテントに……。東アジアにおける米軍のプレゼンスを低下させたいという思惑を持つ、中国や北朝鮮の影が見え隠れするのです。〉(「週刊新潮」17年05月18日号)
ネトウヨ流の飛躍が激しいので、読者向けに“翻訳”してこう。まず、KAZUYAが辺野古で発見したという「座布団」にはハングルで「下野しろ」と書かれていたという。で、それは韓国の朴槿恵退陣デモのスローガンだという。ところで、KAZUYAに言わせれば国内で約90%いる“反・朴槿恵派”は、なぜか全員が“親北朝鮮派”ということになるらしい。ゆえに、辺野古にその「座布団」があったから、基地反対派は北朝鮮と関係がある。きっとそうに違いない。だから、ここには「東アジアにおける米軍のプレゼンスを低下させたいという思惑を持つ、中国や北朝鮮の影が見え隠れする」というのだ。
バカも休み休み言ってほしい。ひとつの取るに足らない事象に飛躍したストーリーをくっつけて、他方で一般的な事実全般はネグりつつ、最終的に「反日勢力」の謀略と結論づける。典型的なネトウヨ陰謀論のミスリードに他ならない。
ようするに、基地反対運動を貶めるための、中国・韓国への悪意と沖縄ヘイトをごった煮にした虚妄である。さらに最近では、「基地反対派はIS(イスラム国)」なるトンデモまで始めたらしい。
前述の我那覇真子氏らとともに“沖縄のネトウヨ”として知られる手登根安則氏が、10月29日、〈嘉手納基地のゲート前にISの旗を掲げテロリストの格好で現れた沖縄サヨク、いくらなんでも、やっていいことと悪いことくらい判るだろう。これでは射殺されても文句は言えない〉と写真つきでツイート、これがネトウヨ界隈で拡散されたのだ。しかし、これを「米軍嘉手納基地前に「IS」メンバー? 日本人男性がハロウィーンで悪ふざけ」(10月30日ウェブ版)なるタイトルの記事にした産経新聞によれば、〈県警関係者によると、男性はISと関係がなく、ハロウィーンに合わせて悪ふざけをしていたという〉ことで、〈普段、嘉手納基地前で「米軍撤退」を叫ぶ基地反対派市民らとは一線を画した活動を行って〉いる人物だという。もはやツッコむ気も失せそうになるではないか。
このように、連中は基地反対運動を毀損するために、トンデモデマでもなんでも平気でぶってくるからタチが悪い。報道圧力もそうだ。例の自民党の「文化芸術懇談会」で百田は「沖縄2紙はつぶさなあかん」というモロな報道圧力を吐き出したが、その後の沖縄タイムスの取材に対しても、「普天間基地ができた後に住み始めて文句を言うのはおかしい」「基地の地主はみんな大金持ち」と言った発言を繰り返したあと、「沖縄だけが戦争の犠牲になったわけではない。大阪も大空襲で多くの人が死んだ」「沖縄の人は中国を歓迎している(から問題だ)」などと主張した。
この百田による悪辣な沖縄ヘイトデマについては、当時、本サイトでも詳しく検証した【https://lite-ra.com/2015/06/post-1231.html】ので、是非そちらを読んでほしいが、冒頭に触れた10月27日の沖縄講演会においても、百田は〈反対運動について「日当が何万円と払われている」「中核は中国の工作員だ」と講演〉し、〈根拠については、取材に「ない。そうとしか思えないと言っただけ」と述べた〉(沖縄タイムスより)という。
いずれにせよ、その虚偽や悪質性を指摘されてもまったく反省せず、沖縄と中国・韓国へのヘイト、下劣な陰謀論とデマを繰り返すネトウヨ作家を、このまま放置していていいわけがないだろう。しかも、その背景には“沖縄いじめ”を繰り返す安倍政権の存在があることを決して忘れてはならない。どれだけバカ丸出しであっても、ひとつひとつ指摘していくしかないのだ。
(小杉みすず)
最終更新:2017.11.02 07:21