森友問題について何を訊かれても、「籠池氏は詐欺で逮捕された」の一点張り
つまり、安倍首相は“籠池前理事長らが逮捕・起訴されたのだから森友問題は決着がついた”というふうにまくしたてたのである。だが、ちょっと待ってほしい。籠池前理事長が逮捕、起訴されたのは補助金の不正受給疑惑であり、国有地が不可解にタダ同然で払い下げられたという森友問題の疑惑の本質とはまったく無関係だ。にもかかわらず、安倍首相は生出演中なんども「詐欺で逮捕された」と繰り返し、“詐欺師”“悪人”だと印象付けた。籠前理事長側にすべての罪をかぶせようとしたのである。
一国の首相が公共の電波を使ってこんなことをして、許されるのか。しかも安倍首相は、籠池理事長に対しては散々「詐欺で逮捕された人物」と繰り返しておきながら、森友問題のカウンターパートで、大阪地検特捜部が背任容疑で捜査をしている近畿財務局側、そして虚偽答弁が決定的になった佐川前理財局長については、一切言及しなかった。
星浩キャスターは、佐川前理財局長が虚偽答弁のあと国税庁長官に栄転したが、就任後数カ月を経た現在にいたるまで一度も記者会見を行っていないことを指摘したうえで、安倍首相にこう問いかけた。
「佐川さんが、国会答弁のあと今年の7月に国税庁長官に栄転されてですね、その後3カ月が経とうとしていますが、一回も記者会見がないんですね。通常、国税庁長官は、就任直後に記者会見をして、こういう方針で徴税にあたりますというのを明確にお話しされるんですけど。
私はそれはやはり国税庁長官としての職務怠慢ではないかと思うんですね。これもぜひ、森友問題を含めて、佐川国税庁長官は安倍首相の部下ですから、やはり『記者会見ぐらいやれ』という指導をしていただけないでしょうか」
星キャスターのこの問いかけを凍りついた顔で聞いていた安倍首相は、「記者会見については、いわば本人、国税庁、財務省で適切に判断するんだろうと思います」と述べるにとどめ、続けて「この(答弁と交渉記録音声との)食い違い等についてはですね、まさに籠池氏は逮捕され、奥さんもですね逮捕され、詐欺罪で、起訴されました」と、またもや“籠池=詐欺師”の構図を刷り込ませるように話をすり替えたのである。
さらに駒田健吾アナから「昭恵夫人の会見については行う予定はないのでしょうか」と聞かれても、やはり「私自身、国会でも何回にもわたって答弁していますから、その必要はない」と強弁し、「よく『籠池さんは国会で証言したじゃないか』(と言われる)。しかし、籠池さん自体は、詐欺罪で、刑事被告人になったわけでありますし、いまの段階でですね、私たちはしっかりと、少なくとも私は何回も説明をさしていただいていると」などと繰り返した。
もう一度言うが、籠池前理事長の逮捕は補助金の不正受給の話であり、疑惑の本丸である国有地売却問題とは別の問題である。