22億円もの公金を注ぎ込んだ官製映画会社がなぜタダ同然で売り飛ばされた?
産業革新機構は売却の理由を、フューチャー社が〈米国拠点を通じた事業展開を行って〉おり、〈提携による成長可能性を慎重に検討した結果〉としているが、西岡氏のレポートによると、同社は毎年億単位の赤字を計上する一方、コロラドでコンサルタント会社を買収している程度で、ハリウッドに人脈があるとは思えないという。
ようするに、産業革新機構は、22億円の公金の損失をもみ消すために、破格の条件で、事業継続の見込みも考えずに、国民の財産を強引に売り渡した、そういうことだろう。前述のマスダ氏は、本サイトの取材に対しこう指摘する。
「映画をつくっている人からみれば、すぐに“詐欺的”だと気がつきます。産革出身のANEW役員も初期に『私ども産業革新機構は業界についてはまったく素人』などと雑誌で語っていますが、ようは、産革は映画製作における資金調達や投資回収根拠を何一つ示さずまま60億円もの投資決定だけを先行させ、3年後からの投資回収の高い蓋然性を語っていました。またANEWへの公的資金が約束していたことは単なるハリウッド映画投資の金儲けではなく、日本のクリエティブ産業の再生までがセットの話でした。しかし、日本で働く多くの『困っている人』がどう豊かになるかなど一切語られず、反対に『グローバルモデルのニッポンのイノベーションで日本のエンタテイメントが生まれ変わる(anew)』などの無意味な企業理念の言葉だけを並べて暴走しました」
さらに、映画プロデューサーであるマスダ氏は、映画産業の現場の立場から産業革新機構とANEWに苦言を重ねる。
「映画ビジネスにおいて『クールジャパンらしさを追求した事業』の自画自賛など何の価値もなく、あくまでも利益を出した作品のポートフォリオが物を言う世界です。当然、撮影に至った作品映画はゼロ。しかし、産業革新機構は、当初語っていた将来見通しが破綻しようが次々と追加投資を実施し、その大半が自分たちへの高額ボーナスや、都内やLAの一等地の家賃などに消え、決算公告をみると映画開発資産への投資すらろくに行っていませんでした。こんなバカな映画会社経営ができるのは『国の金だから』という甘えにほかならず、このずさんな経営で22億円もの国民財産の毀損させる結果を生みました」