映画はほとんど企画だおれの一方、毎年莫大な赤字が垂れ流し
会員制情報誌「FACTA」8月号で、ジャーナリストの西岡研介氏がANEWの内部資料をもとに企画の進捗状況を暴いているが、それによると、『オトシモノ』は監督選び、『ソウルリヴァイヴァー』『藁の楯』は脚本開発の最終稿段階でストップ。『TIGER & BUNNY』はじめ3作品はあらすじか第1稿止まり。製作が決まったのは『大空魔竜ガイキング』のみなのである。その『大空魔竜ガイキング』も、ANEW設立前から『ターミネーター』を手がけたアメリカ人プロデューサーが企画開発を行っていたところに、横からANEWが入っただけだったという。
しかも、ANEW はほとんどなにも成果を上げることができない一方で、莫大な赤字を垂れ流してきた。1期目は1200万円、2期に2億5000万円、3期に3億1000万円、4期と5期にそれぞれ4億3000万円、直近の16年12月期には3億4000万円と、合計約18億円もの赤字を計上してきた。
実際に映画をつくり始めたわけではないのに、なぜ18億もの赤字が出るのか? その金はどこに行ったのか? 疑問を抱かずにはいられないが、こうした赤字を補填してきたのが、前述した経産省の管轄下にある産業革新機構だった。決算公告によると、産業革新機構は2011年に資本金等として6億円を出資した以外に、13年に5億円、14年に11億と、計22億円を拠出している。
このANEWの問題を早くから追及していた映画プロデューサーのヒロ・マスダ氏は自らのブログで、こうしたノーズロな赤字垂れ流しと資金提供の裏に、産業革新機構の人間が、自ら経営者になっている会社に100パーセント出資するという利益相反関係の構造があったことを指摘。〈行政ぐるみで法令及びガイドラインを歪めた巧妙な公金横流しスキーム〉であると批判している。
しかも、話はこれで終わりではなかった。今年5月、このANEWを京都市に本社を置くフューチャーベンチャーキャピタル株式会社という会社に売り渡すことが、産業革新機構から発表されたのだ。しかも、その売却金額は驚くべきものだった。産革は金額の公表を拒否しているが、前出の西岡氏が取材したところ、フューチャー社が「3400万円」であると認めた。
つまり、22億円もの公金をつぎ込んだ官製映画会社が、ただ同然で売り渡されていたのだ。