民族差別だけでなく、ネトウヨのデマをノーチェックで引用
中国人や韓国人に対して、民族や国籍でひとくくりにして、「禽獣以下」だの「息をするように嘘をつく」だの「病的」だのというのは、完全に民族差別、ヘイトだろう。
しかも、タイトルと書き出しで宣言した「儒教」については、同書をいくら読んでもの儒教思想に対する深い分析などまったく出てこない。たんに上記の中国人、韓国人ヘイトに対する悪罵をなんの根拠も示さないまま、すべて「儒教の呪いがなせる業」「儒教に呪われた中韓の人間」「儒教の呪いにかかったコウモリ国家」、果ては「儒教の陰謀」などと繰り返しているだけなのだ。
こんな安易な論理が通用するなら、逆に日本についてだって同じようなことが書けてしまうだろう。たとえば、「日本人は市民から政治家や官僚まで、常に上の顔色をうかがい、強いものに媚び、弱いものいじめをする民族だが、これは明治維新の原動力になった武士たちの中に儒教精神が息づき、戦前の教育勅語が儒教の影響を色濃く受けているせいだ」なんてこともありになってしまう。
しかし、ケント氏はもちろんそんなことは言わない。あとがきでは、一転して、日本人をこう褒め称えるのだ。
〈日本は世界に誇るべき歴史を持った国です。そして日本人は誰からも尊敬され、愛される国民性を持った民族なのです。〉
中国、韓国に対する差別的攻撃の一方で、日本人を優秀な民族として手放しで絶賛する──これは、本を売ろうとする悪質なヘイト本のやり口そのものだろう。
さらに、ため息が止まらないのは、同書が中国・韓国人を悪者に仕立て上げたいがゆえに、「火病」や「ウリジナル」などとネトウヨ系の語彙を連発するとともに、悪質まとめサイトレベルのデマや陰謀論までバンバン展開していることだ。
たとえば、ケント氏は〈「二〇五〇極東マップ」なるものがネットにアップされ、一部で話題になりました〉〈中国外交部(外務省)から流出したとされる〉などとして〈日本占領計画の一端である可能性がある〉と書いているが、これは、もともと日本人が作った地図がSNSや匿名掲示板で尾ひれがついただけの代物。とっくに虚偽だと判明している。