【トンデモその2】
「共謀罪がないと東京五輪を開けない」と真っ赤な嘘をふりまき世論を騙した安倍首相
デタラメといえば、もうひとつ、忘れてはいけないのは、五輪に向けた「テロ対策」という大義名分だ。当初、政府は「テロ等準備罪」という名称を強調し、共謀罪を成立させなければ国際的組織犯罪防止(TOC)条約に加盟できない、TOC条約を締結できなければ五輪は開けない、という論法で、この悪法を喧伝していた。
実際、安倍首相も1月23日の衆院本会議で、「国内法を整備し、条約を締結できなければ東京五輪・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と強弁した。
オリンピックが国民の人権を制限しないと開けないようなイベントなら、そんなものさっさと開催を返上すればいいと思うが、それ以前に、このテロ対策自体がまったくの大嘘なのだ。
日本政府はこれまでに国連のテロ対策関連条約のうち主要な13本を批准し、日本の国内法ではすでに57もの重大犯罪について「未遂」よりも前の段階で処罰できるように整備済みだ。日弁連も共謀罪立法がなくても国連条約締結は可能だと法的観点から指摘している。
また、このインチキはTOC条約の専門家からも指摘された。TOC条約の「立法ガイド」の執筆者であるニコス・パッサス氏が「条約そのものは、プライバシーの侵害につながる捜査手法の導入を求めていない」「新たな法案などの導入を正当化するために条約が利用されてはならない」と述べたのだ。
だいたい、2013年のブエノスアイレスでの五輪招致最終プレゼンで、「東京はいまも2020年を迎えても世界有数の安全な都市」と胸を張ったのは誰だったのか。にもかかわらず、共謀罪を強行したいと考え始めた途端に共謀罪がなければ開催は不可能などと嘯く安倍首相の二枚舌には呆れるしかない。
【トンデモその3】
対象限定は嘘! 実際はテロと無関係な法律違反も共謀罪に!「山でキノコを採ったらテロリスト」発言も
その嘘だらけの「テロ対策」という大義名分だが、何がテロか、という説明もひどいものだった。法案の実質審議入りを控えた4月17日、金田法相は驚くべきことに、「保安林の木やキノコ、筍を採って売れば、テロ組織の資金源となる(から共謀罪の対象になる)」などと言ってのけたのだ。
周知の通り、政府は共謀罪の対象犯罪を277に限定したと喧伝したが、実際は、複数の犯罪をひとつにまとめるなど少なく見せようとしただけ。しかも、そのなかには依然として「文化財保護法」や「種苗法」など、テロとはまったく無関係の法律違反が多数含まれている。金田法相はこれを追及され、必死にごまかそうとしたわけだが、いやいや、山でキノコや筍をいそいそとパクる「テロ組織」ってなんなのか。というか、どこでそんな山の幸を売るのか(道の駅か?)。あまりにもバカげているとしか言いようがない。
だが、これをたんにバカ大臣の妄言と笑い飛ばしてはならない。あらためて言うが、共謀罪は「テロ対策」とまったく無関係の犯罪であっても、とにかく対象を広げるだけ広げ、「共謀」なる未遂・準備以下の内心の問題を見張り、恣意的な検挙を可能にするための法律である。ようするに、恣意的な「共謀」の認定によって、誰でも「テロリスト」にされてしまいかねないのだ。