荒唐無稽な「北朝鮮スパイテロ危機」を煽る産経編集委員と宮根誠司
まったく、ご都合主義としか言いようがないが、これを受けて、マスコミは完全に“戦争前夜ムード”を演出する報道一色になった。米軍基地の存在が逆に脅威になっていることの指摘や、安倍政権の好戦的な姿勢への批判は一切せずに、「北朝鮮からミサイルが飛んでくる!」「ミサイルがきたら、頑丈な建物へ避難して」とひたすら騒ぎ立ててきた。
それだけではない。一部のマスコミは北朝鮮危機を煽るなかで、在日コリアンに対する偏見や差別を扇動するようなことまでおっぱじめた。
たとえば、24日の『みんなのニュース』(フジテレビ)だ。街頭取材で普通に街中を歩いていた市民に“ミサイルが飛んできたらどう避難するか”を実践してもらうという、もはやどうかしているとしか思えないVTRを流すなど、やりたい放題だったのだが、さらに酷いのはスタジオでのコメント。MCの伊藤利尋アナウンサーが唐突に“日本国内に北朝鮮のスパイがいる”として、スリーパーと呼ばれる工作員の話題に切り替えると、それを受けた産経新聞編集委員の久保田るり子氏が、得意げにこんな解説までし始めた。
「だいたい三桁ぐらいいるというふうに言われてるんですね。直轄のスリーパー、いつもは普通の生活をしていて、いざというときに動き出す人たちがいるわけですね」
「日本人拉致のときで、やはり海上からたくさんの工作員が、ほとんどノーマークで上がってこれるという無防備な国、ましてや、そのスパイ防止法がなかったわけです、いまもないわけですね」
「日本は(米国の)後方支援基地ですから、(北朝鮮が)ここを混乱させたいと、その場合にたとえばですね、原発をテロの標的にする、あるいは、新幹線、あるいは山手線をイントラネットで入ってですね、混乱させる。そういったよくわからないテロがぼんぼん起きたら日本中が混乱になるじゃないですか、そういう可能性があると思いますね」
久保田編集委員のネトウヨ的妄想発言はいまに始まったことではないが、「三桁のスリーパーが動きだす」とか、根拠がなさすぎてもはや笑うしかない。しかもこんな状況下で「よくわからないテロ」とか「新幹線や山手線を混乱させる」とか、具体的内容も根拠も示さないまま、ひたすら、普通に生活している人間の中に、北朝鮮のテロ工作員がいると煽るのである。これでは、関東大震災の朝鮮人虐殺を引き起こしたデマと変わらないではないか。
だが、こうした根も葉もない“工作員脅威論”を振りかざしているのは、久保田氏だけではない。たとえば12日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、司会の宮根誠司が「有事で北朝鮮崩壊ということになると、当然、北朝鮮難民という人がやってくる」として「このなかにテロリストが紛れているともわからない」などと煽っていた。