さらに、荷物増加と運賃の下落は、労働環境にも影響を与える。以下も近藤の証言だ。
「多いときは、月に90時間から100時間ぐらいサービス残業をしていますね」
「何年も働いていると、サービス残業をこなすのは暗黙のルールのようになります。ヤマトは、サービス残業ありきの会社だと割り切っていますから。これを上司や本社にいっても現場の長時間労働が変わることはないだろう、と思っています」
結果として、ヤマトもついに音を上げ、運賃やサービスの適正化に踏み切ったのは、本稿冒頭で示した通りである。
しかし、疲弊しているのは運送会社の宅配ドライバーだけではない。それは、アマゾンの末端スタッフも同じである。
「週刊SPA!」(扶桑社)17年4月4日号には、過酷なノルマに加え、ノルマ未達の場合のペナルティーに苦しむアマゾンの倉庫スタッフたちから寄せられた告発が掲載されている。
特集でまず証言するのは、「ピッキング」を担当するスタッフ。ピッキングとは、ハンディという端末を手にしながらその機械に表示された商品を、約200m四方の倉庫内に並ぶ大きな棚を歩き回りながらピックアップしていく作業だ。
これだけ聞くとそんなに大変な作業のようには思えないかもしれないが、これにはキツいノルマがある。
「ノルマは1分に3個ですが、走るのは禁止されているので、みんな脚を棒にしながら競歩のように早歩きしています」
就業中ずっと早歩きで棚を行き来するのは精神的にも肉体的にも、なかなかの負荷だろう。そして、もしもこのノルマを達成できなかった場合、ペナルティーが待っている。
「ピッキングのノルマが達成できないと、通称“カウンセリング”という名の叱責が待っているのですが、最近はこれがほぼ毎日のように行われている。誇張でもなんでもなく、倉庫内は一息つくことさえ許されないような、ピリピリした雰囲気が充満しています」
その叱責とはどのようにして行われるのであろうか? 「SPA!」にはこのような証言が掲載されている。
「数字がふるわない作業員は朝礼や、作業中に呼び出されて怒られる。そこから『どうすれば生産性が上げられるかを一緒に考えてみましょう』と言われて延々と会議が続き、リポート提出を義務づけられる。今は慣れましたけど、やっぱり特殊な職場ですよね」