ヤマト運輸HPより
先日、ヤマト運輸とアマゾンとの間で当日配送サービスを縮小する方向で交渉が進められていると発表されたことは大きなニュースとなった。アマゾンをはじめとしたネット通販の隆盛により、宅配便業界が深刻な過剰労働を強いられている状況が社会問題化しているのはご存知の通りだが、特にヤマト運輸は2013年度にアマゾンの取り扱いを本格的に始めて以降、宅配個数が一気に増加。昨年度は約18億個もの数で、そのうち2割がアマゾンの荷物ともいわれている。
ヤマト運輸はすでにドライバーに負担を強いる配送サービスの廃止を発表し始めており、昼食休憩の時間にあたる12時〜14時の時間指定を廃止。また、夜間の再配達を受け付ける時間を1時間前倒し。20時〜21時の時間指定を失くして、19時〜21時の指定に改めることになっている。さらに、再配達に伴う負担軽減を目指したシステムづくりや荷物量の抑制を目指し、今年の秋には27年ぶりとなる宅配料金の全面的な値上げも予定されている。
その裏側にはどんな過酷な労働があったのであろうか? 昨年末の「週刊文春」(文藝春秋)で、1年間ユニクロにアルバイトとして潜入したルポを発表し大きな話題を呼んだジャーナリスト・横田増生氏による著書『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館)には、想像以上に過酷な宅配業者の現実が詳らかにされている。
その一例としてあげられているのが、業界最大手であるヤマト運輸の下請け業者のケースだ。横田氏は、ヤマト運輸の宅急便を各家庭に配達する菊池次郎(仮名)という下請け業者の助手として、その1日に密着している。
仕事が始まるのは朝の7時すぎ。ヤマト運輸の宅急便センターで菊池は自分の軽トラックにその日配達する荷物を積み込んでいく。報酬は運んだ荷物の数によって決められ、その額は「1個150円強」だという。菊池が働くセンターでは、1日に100個程度の荷物が回ってくるとのことで、単純計算すると日当は1万5000円ということになる。
〈菊池がこの日、3回の配達で合計100個強の荷物を配り終えたのは午後九時前のこと。不在で持ち帰った荷物は1個。不在の分は、菊池の売り上げとはならない。(中略)
経費を差し引いて計算し直すと、時給は800円台にまで下がり、首都圏のコンビニやファーストフードの時給より安くなる〉
当然だが、配達員の仕事は肉体的にもかなりきつい。それにも関わらず、コンビニより安い時給で長時間勤務し、さらには下請けだと3カ月で契約が切られてしまうのだという。労働の条件としては相当に厳しいものであり、こんな環境では人手不足になってしまうのも仕方ないというしかない。