日本会議が背後にいる幼稚園での改憲署名活動と、安倍首相がいかにして関係しているかは現時点では明らかでないが、いずれにせよ、これは教育基本法第14条第2項の「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」に抵触する政治活動そのものだ。
仮に、一国の総理大臣が園内での改憲運動を黙認していたのならば、明らかに違法かつ倫理的責任は重大。即刻辞任すべき大問題だが、一方で自民党は、「子供たちを戦場に送るな」という教員を「偏向教育」として処罰する目的で“密告フォーム”までつくるなど、学校教育への介入を着々と進めている。
これは、昨年7月の参院選公示直前、自民党のホームページ上で公開された「学校教育における政治的中立性についての実態調査」なるもの。そこで〈「子供たちを戦場に送るな」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいる〉と記し、これを〈偏向した教育〉〈特定のイデオロギー〉と糾弾して、〈政治的中立を逸脱するような不適切な事例を具体的(いつ、どこで、だれが、何を、どのように)に記入してください〉と、学校や教員の情報を投稿させるフォームを設置した。
つまり、「子供たちを戦場に送るな」というごく当たり前のことをいう教師を弾圧し、監視によって教育現場を統制することで「戦争反対」とさえ口にできない空気を作り出そうというわけだ。さらに昨年8月には、自民党の木原稔財務副大臣(当時・党文部科学部会長)が“密告フォーム”に寄せられた情報の一部を警察当局に提供する考えまで示した。
その後も、12月6日に開かれた自民党文部科学部会では、教員の「政治的中立性」を確保すべく、処分を厳格化する方向で検討を開始。朝日新聞の報道によれば、同部会は〈現状では政治的中立を逸脱しても「処分が重くない」と指摘。教育公務員特例法を改正し、罰則を科すことも検討すべきだとした〉という。
ようするにいま、安倍政権は自分たちの意に沿わない教員や教育現場を「政治的中立」ではないとして弾圧しようとしているのだ。にもかかわらず、教育勅語を中心にすえ、ましてや改憲の署名集めまで行っている学校に対しては賛辞を送り、まったく問題視しようとしない。こんな二枚舌が許されるわけもないが、少なくとも、安倍政権のいう教育の「政治的中立」などテタラメでしかないこと、そして、連中が目指す学校教育のトンデモぶりがまたもや証明されたわけである。