それは歌づくりにも大きな変化をもたらした。
「それまではきわめて個人的な歌というか、ともすれば意味不明みたいな(笑)、自己満足的な歌もあったんですけど、失われたものを取り戻すことや再生することが必要とされているなかで、それではあかんやろという気分になった。ちゃんとしたテーマだったり、向かう対象を明確にして、自他ともに認めるような何かが欲しいというかね、作るのもやるのも」
こうして、「#9 story」のような楽曲が生まれたのである。ちなみに、前述「SPA!」のインタビューでは、東京オリンピックについてもこんなふうに語っていた。
「まあ、建築物とか投資で儲ける人はおるんやろうけど、それで不景気を脱しようっていうのは強引すぎへんかって思いますね。おそらくそれなりに盛り上がるんでしょうね。でも終わったらすごく寂しくなるんじゃないかな。作ったはええけどどうすんねん、この動く歩道! 誰も通らへんやないか、みたいな(笑)」
そして、「もしテーマソングのお話が来たらどうします?」という質問は、このように切って捨てる。
「そら丁重にお断りしますよ。誰が歌うんやろとか思いますね」
昨年末、山崎まさよしは、約3年ぶり、11枚目のアルバム『LIFE』をリリースした。「#9 story」ほど象徴的な楽曲は収録されてはいないものの、「君の名前」や「空へ」など、自身の娘や息子に向けて書かれた楽曲が目立つ。
子どもをもったことでより「社会」に対しての意識が高まった山崎まさよし。これからも、山崎らしい表現で、戦争に抗い平和を訴える楽曲を聴かせてほしい。
(新田 樹)
最終更新:2017.11.16 04:38