古谷氏の証言によれば、古谷氏は編集長時代、蟹江社長の望む「過激なネトウヨ路線」を拒否したというが、「直前に彼の好む原稿と差し替えたり、著者をすげ替えたり、特集が変更になったりと、混乱の連続」だったという。結果、13年2月刊行号をもって編集長の任を解かれた。蟹江社長が編集長の意向を無視して強引に編集に介入していたとしたら、これも一種のパワハラに近い行為と言えるかもしれない。
また、青林堂の元アルバイトは大泉氏に対して、蟹江社長の“素顔”をこう語っている。
「そもそも蟹江さん自身がネット右翼。ネットばかり見ている。在特会が大好きで、献金もしていたと聞いてます。
もともと内向的な人で口下手な人。模型が大好きで、ミリタリー物も好き。萌え系のかわいい絵も好きな人で、『ジャパニズム』の表紙の萌え系イラストは、実は蟹江さんの趣味なんです」
蟹江社長は萌えアイドルアニメ及びゲームの大ファンで、『ストライクウィッチーズ』や『ガールズ&パンツァー』などの、ミリタリーと萌えの混合的アニメを好んで見るという。まるで絵に描いたような“オタク系ネトウヨ”だが、実際、蟹江社長は07年に実弾発射機能を持つように改造したモデルガンを所持していたとして、銃刀法違反容疑で逮捕されたこともある。報道によれば、蟹江社長は「かっこよかったから」などと話していたという。
しかも、こうした蟹江社長のゴリゴリのネトウヨ性は、青林堂の出版物だけでなく、同社のブラック経営体質にもつながっているとみるべきだろう。
実際、ヘイト・ネトウヨ的思想をもつ経営者が経営する企業では、内部でもパワハラが横行していることがままあるからだ。
たとえば、極右・歴史修正主義のスポンサー的な存在で、「南京虐殺はなかった」ことを主張する本を客室セットしていたことが世界的にばれて大問題になっているアパホテルも、「週刊文春」08年1月3日・10日号で、「あの会社はまるで北朝鮮のようだ」という元従業員の証言とともに、元谷氏とその息子であるホテル専務の拓氏のブラック労働強制やパワハラがこれでもかと暴露されている。朝礼では「アパにふさわしくない人物がいる」と名指しで攻撃される、社員が判子を求めると目の前でわざと書類を落として拾わせる、さらに、アパの本社社員は新年、西麻布の元谷家を訪れ、元谷氏の孫にひとり2000円のお年玉を渡さなければならない、という信じられないエピソードまで明かされていた。