〈文月 タイトルの「入らない」の部分についてもお伺いしたいのですが、これは文字通り「入らない」という意味もありますし、大人の社会に「入れない」、世間で「これが幸せ」とされる家族の形に「入れない」というところにも掛かっているのかなと思ったんです。
こだま わあ……うれしい。タイトルについては、変える話は何度も出たのですが、だとしても「入らない」だけは使いたいと思っていたんです。ちんぽも「入らない」し、級友の輪、生徒の心、妊娠や育児の話……とあらゆる場に「入れない」自分を強く意識しながら過ごしていました。これ、読み取っていただけてすごくうれしいです。〉
だが、この本をめぐって一つ懸念があるという。問題となっているのは、やはりインパクトの大きすぎる『夫のちんぽが入らない』というタイトルだ。「週刊ポスト」(小学館)2017年1月27日号にはこのように書かれていた。
〈発売前から話題沸騰の本書だが、一つ大きなハードルが立ちはだかる。新聞広告だ。書籍のタイトルにもかかわらず、新聞社によっては「ちんぽ」という字が審査で引っかかり、広告を出せない事態が想定されるという〉
『夫のちんぽが入らない』は決してふざけた本ではないし、エロ小説でもない。押し付けの家族観・恋愛観に苦しんでいる人に一筋の光を照らしてくれるような本である。一読すれば、ただのウケ狙いのタイトルなどではなく、このタイトル以外にあり得ないことも理解できるだろう。タイトルだけでこの本が誤解され、届くべき人のところまで届かないといった事態が起きないことを切に願うばかりだ。
(新田 樹)
最終更新:2017.01.22 11:14