そして、「財政規律条項」にいたっては、トチ狂っているとしか言いようがない。「次世代に借金を残さないためのもの」などと聞こえはいいが、アベノミクスの失敗によって2016年度の第3次補正予算案で1.7兆円もの赤字国債を追加発行した当人が財政の健全化を憲法に明記しようと言い出すとは、自己矛盾も甚だしい。しかも、これも憲法に規定を設けずとも法律で対応できるものであり、現に自民党は下野時代の2010年に「財政健全化責任法案」を提出していたし、昨年2月には民主党(当時)と日本維新の会も同法案を提出している。憲法云々ではなく法案として議論するのが筋だろう。
このように、これから安倍政権が動き出す改憲内容は、そのすべてが早急な憲法改正の必要などないものだらけだ。にもかかわらず自民党は、いかにも必要な改正であるかのように装い、現行憲法や法律で対応可能であることを覆い隠し、改憲へと議論を進めていくはずだ。
だからこそ、忘れてはいけない。これはもはや“お試し改憲”“ソフトな改憲”などではなく、明確な「偽装改憲」「改憲詐欺」だ。
(水井多賀子)
最終更新:2017.11.15 05:53