横田増生『アマゾン・ドット・コムの光と影』(情報センター出版局)
今年の新語・流行語大賞にもノミネートされた「文春砲」が、またしても話題になっている。だが、今回注目を集めているのは、有名人の華やかなスキャンダルではない。ジャーナリストである横田増生氏が国内アパレル最大手・ファーストリテイリングが手がけるブランド・ユニクロに約1年間も潜入した、渾身のルポルタージュだ。
まず、横田氏は「週刊文春」(文藝春秋)12月8日号に第一弾となるルポを発表。すると、たちまちネット上で「1年も潜入取材するとかw」「体当たりとはこのことか」「これぞジャーナリストの鑑!」と大きな話題を集めることに。また、翌週15日号で「ユニクロ潜入記者 12月3日解雇されました」と題し、第一弾の記事を理由にユニクロを解雇された経緯を公表すると、今度は「まだ働いていたのか!」「根性ありすぎる」と驚嘆の声が広がった。
昨日発売の22日号でも横田氏は第三弾としてユニクロの過酷な労働環境を告発しているが、そもそも、横田氏とユニクロには“因縁”があった。
というのも、横田氏は2011年にユニクロのブラック企業ぶりや柳井正会長の実像に迫った『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋)を出版したが、これに対しユニクロが2億2000万円という常識では考えられない高額の名誉毀損訴訟を起こしたのだ。裁判は最高裁までもち越されたが、結果は文藝春秋の全面勝訴だった。
さらに横田氏は裁判中、ユニクロの決算会見への出入が禁止されていたが、裁判が終わったのちの15年4月に行われた中間決算会見の取材も拒否された。会見当日、横田氏が「週刊文春」で報じたカンボジア工場でのブラック告発記事が原因だった。同じころ、ユニクロの柳井社長はビジネス誌「プレジデント」(プレジデント社)でこんな話をしている。
「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。(中略)社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」
この柳井発言を知った横田氏は、それを実行することに。そこで最初に横田氏がおこなったのが、“横田”の名前を変えることだった。