じつは、この「新憲法大綱案」発表より以前の04年6月に自民党憲法調査会の憲法改正プロジェクトチームが憲法改正の草案をつくるにあたって公表した「論点整理」でも、24条は《家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである》と言及されている。ここで注目したいのは、このとき同じように「見直すべき」がされたのが、《国の防衛及び非常事態における国民の協力義務》だということだ。
これは安倍政権が新設を目論んでいる緊急事態条項の、《緊急事態が発せられた場合、何人も公の機関の指示に従わなければならない》(自民党憲法改正草案99条3)にあたる。件の「新憲法大綱案」は、やはりもっとわかりやすく書かれている。
《国家非常事態に際して、憲法および法律の定めるところにより、国および地方公共団体の実施する措置に協力する責務、という意味で、国民の「国防の責務」を規定する。》
家族の重視と、国民による国防の責務──。安倍首相がずっと訴えてきた、そして現在、とりわけ改憲の必要性を訴えるこのふたつと、さらに9条をセットで考えれば、はじめて改憲派の真の「目的」が見えてくる。
たとえば、いち早く24条改正の危険性に警鐘を鳴らした05年出版の『憲法24条+9条 なぜ男女平等がねらわれるのか』(中里見博/かもがわ出版)では、このふたつの改正は〈男性の国防義務と、女性に課せられる家族扶助義務〉という性別役割主義に対応していると看破。24条改正は〈男女不平等な性別分業型家族に基礎を置いた軍事国家へと日本を造り変えるという国家構想の一環として出されてい〉ると指摘している。
喫緊の問題として少子化対策に取り組むのならば、普通は男女の平等性をより高め、女性が「働きやすく産みやすい」環境をつくることにまずは着手するはずだ。しかし、安倍首相はそれをしない。その理由は、女には家族扶助という役割を課さなければ「戦争ができない」から──。そう考えれば、安倍首相が24条改正とともに緊急事態条項の新設や9条改正に意欲を示しているのか、判然とする。