政府はこのSBSによって、国産米と輸入米の価格がほぼ同水準と言い張っており、TPP交渉において、アメリカとオーストラリアから年間最大約7.8万トンもの無関税の米輸入枠を新設することを妥協した際も、SBS方式を根拠に国産米に輸入拡大の影響はないとしてきた。
ところが、今年9月、輸入商社と米の卸業者がグルになって、不正取引を行っていたことが発覚した。そのやり口は、表向きの価格より安く仕入れながら国にそのまま高く売りつけ、その差額を卸売業者に調整金として裏で支払うというもの。この調整金のおかげで、卸売業者は表向きの価格より安い値段で輸入米を購入する結果となり、実際は市場に国産米より安い輸入米を流通させていたのだ。
しかも、これは1社や2社の話ではなく、業界全体の慣行になっていた。
日本農業新聞が行った輸入商社への聞き取り調査では、回答した全社が輸入米を扱う理由を「国産米より安いから」とし、取引する米の相場も「国産品より2割安」とする回答がもっとも多く、なかには「4割安」という回答もあった。
ところが、農水省はこうした実態を把握していたにもかかわらず、隠蔽していた。農水省は問題発覚時には「調整金」の存在を「知らなかった」と回答していたにもかかわらず、翌日には2014年から把握していたと見解を一転。その上、今月7日に発表した実態調査結果では「国産米の需給と価格に影響を与えていることを示す事実は確認できなかった」として事態を収拾しようとしたが、あまりに調査が不十分であったために批判が起こっていた。
たとえば、農水省は調整金分を値引きに使って輸入米を販売していた会社は1社もないと発表していたが、毎日新聞の取材に卸売業者10社が「輸入米の値引きに使った」と証言している(10月27日付)。また、調整金を受け取った卸売業者が実際はいくらで流通させていたかについての調査において、農水省は2社からしか聞き取りを行っていないという指摘がなされていた。だが、山本農水相は今月11日の会見で「民間ビジネスの機微に触れる内容なので調査は任意で行わざるを得ない」などと弁明し、問題の幕引きをはかろうと必死だった。
ところが、SBS米の不正取引の隠蔽を行っていた省のトップである山本農水相が、その不正取引の当事者である輸入業者と卸売業者から資金提供を受けていたのである。隠蔽と関係していたといわれてもしようがないだろう。
そもそも、山本農水相の農業行政、TPPに対する態度はいたって不誠実なものだ。昨年11月には、地元である衆院高知2区の須崎市で開かれた「JAまつり」で行われていた「TPP交渉『大筋合意』撤回」という署名に、「現在の大筋合意以外に対策が必要。いまの段階では反対するので署名する」と言ってサインしていたことを、今月27日のしんぶん赤旗が伝えている。