ちなみに、先に挙げた新潮社の雑誌で『カエルの楽園』が取り上げられたのは、「波」3月号が掲載した刊行記念の著者インタビューと、「週刊新潮」5月26日号に百田氏が寄稿した「トランプ大統領誕生で『カエルの楽園』が予言の書になる日」という記事、「新潮45」5月号に掲載された「百田尚樹『カエルの楽園』サイン会 爆破予告顛末記」という記事のみ。しかもこの「新潮45」の文責は「出版部担当N」とあり、これは『カエルの楽園』の担当編集者である中瀬ゆかり氏のことだろう。つまり、本人と担当編集者しか本の紹介をしていないのである。
書評に載せないのはおかしい!とがなり立てる雑誌の発行元が書評コーナーで取り上げていないという現実、それこそが『カエルの楽園』の評価を物語っているだろう。実際、本サイトは以前、この本を取り上げた際に、複数の新潮社の文芸編集者に意見を聞いたが、全員、困惑顔で「あれは小説じゃないでしょう」「あんなものを出して本当は恥ずかしい」と語っていた。今回の「週刊新潮」の記事だって、おそらく編集者がやりたくてやった記事ではないだろう。百田センセイは被害妄想をいい加減にして、この現実をきちんと認識したほうがいい。
それでも百田氏がどうしても文芸作品として認めてほしいというのなら、中瀬氏に頼んで新潮社が勧進元の山本周五郎賞に『カエルの楽園』を候補作にしてもらえばいい。選考委員である作家たちからどんな批評が飛び出すかは火を見るよりも明らかだが、本サイトとしてもぜひ選評を読んでみたいものだ。
あ、もちろん、以前、山周賞候補になった『海賊と呼ばれた男』のときのようにノミネート辞退、なんて逃げ方はナシですよ?
(編集部)
最終更新:2017.11.24 06:48