しかも、小池氏は街頭演説で、保育園問題の根本になっている保育士の待遇改善について、“お給料を上乗せするという平面的ではない小池式の考え方”があると主張。「空き家ですよ! 空き家はたーくさんあります」と前置きして、こんなことを話している。
「(保育士に)その空き家でもって生活をしていただくことが、真の意味の待遇改善に繋がると、このように思うんですがいかがでしょうか! 家を使うんです!」
つまり、保育士の給料は増やさないが、「ただ空いているアパート、ちょっと古びた一軒家」(小池氏)に住まわせてやる、と言うのである。
規制緩和で無人になっているアパートが保育園になり、狭い部屋に子どもたちがぎゅうぎゅう詰めにされ、ついでに保育士たちもそうした場所に押し込められる。──小池氏の話からは地獄絵図のような状況しか目に浮かばないが、こんな政策をドヤ顔で「真の待遇改善だ!」と言える神経がさっぱり理解できない。
さらに、育児支援の策として、小池氏は〈保育ママ、保育オバ、子供食堂などを活用〉と謳っている。
これにはもう、「厚顔無恥もいいかげんにしろ」と言いたい。そもそも子供食堂というのは、政府および行政に共働きやシングルの家族へのフォローがないため、地域に住む人びとが自発的かつボランティアとして行ってきた活動だ。これを育児支援として“利用”することは、行政の責任をまったく自覚していない証拠だろう。
また、小池氏は「保育ママ、保育オバを活用する」というが(「保育オバ」という謎ワードへのツッコミはとりあえず置いておく)、どうして子育てにかかわる人間を女性に限定させるのか。小池氏は“女性の活躍を体現できるのは女性知事の私しかいない”と胸を張るが、結局は保育を女性にだけ押し付け、男性が子育てに参加する機会を奪っているに過ぎない。
つまり、小池氏に“女性ならではの提言”などなく、保育問題にかんしてはむしろ現状より悪化させそうな策しか打ち出していないのである。もし、いま東京で暮らす女性たちや子どもが置かれた環境について真剣に考えているのであれば、こんなあほらしい政策は恥ずかしくて出せるはずがない。
しかし、女性を小馬鹿にしているとしか思えない小池氏のこうした政策は、ある意味、本人の思想を見れば深く納得できるものだ。
実際、小池氏は、自身のオフィシャルサイトで、少子高齢化の原因について、このような論考を披露している。