法律事務所に勤務している宇田川玲奈(仮名)さんも同様だ。彼女の夫は仕事を辞めろとは言わなかったものの、家事や育児を一切手伝うことはなく、それが原因で怒りと不満を募らせた。結果、宇田川さんも10人近くの男性と不倫を重ねていくことになる。だが、彼女にとっても、不倫はあくまでガス抜き。浮気しながらも家庭を最優先にし、恋愛関係がこじれた時に暴走する恐れがある男とは始めから不倫関係にならないようにするといった工夫までしていた。そんな宇田川さんも、先の麻田さんと同じように語る。
「浮気をする前よりも、夫の関係がすごくよくなりました。いつも夫に対して、私ばかり我慢して、“私だけが育児をし、人生の辛い部分を押し付けられた”と怒っていたのですが、それがきれいさっぱりなくなりました。私も浮気しているし、あなたは鈍感でまったく育児をしなかったけど、これでおあいこだよね、と思えるようになりました」
これが最近の不倫女性の現実なのだが、このような状況になったのには理由がある。それは、「稼ぐ女」が増えたということ。男女の雇用に関してはまだまだ問題は山積しているが、それでも格段に改善され、夫より妻の収入の方が高い家庭も徐々にだが増えつつある。
『不倫女子のリアル』に登場する女性たちも全員が職をもっており、それなりに収入がある人ばかりだ。そうすると、当然のことながら不倫がバレて離婚にいたるリスクをさほど感じない。先ほど登場した麻田さんは「私にも娘と食べていけるだけの経済力はあるので、恋愛も自由ですよね。私の場合、離婚したら娘は私のもとにくるでしょうから、夫はたった1人になってしまう。私は慰謝料を払う覚悟もあるし、養育費などをもらわずに育てる自信もあります。すると、夫にとって離婚は孤立するというデメリットしかない」とまで言い放っている。
さすがにここまで大胆な物言いをする人は珍しいかもしれないが、しかし、女性たちが夫への怒り・恨み・不満などを押し殺さず人生を謳歌し始めるようになったのには、麻田さんが証言したような状況が大きく影響している。これまで「浮気は男の甲斐性」などと言われていたが、この「男」の部分が「男女」に変わりつつあるのだろう。
『不倫女子のリアル』はこう指摘している。
〈今もまた戦後と同じように家族観や道徳観が激変している。それと同時に、婚外恋愛に踏み切る女性が急増している。事象を追っていたら、あまりにも多くの“普通の女性”が不倫を自らの意思で楽しんでいる事実があった。それは旧来の“不倫=不幸”という価値観では断じられないほど、多様で自由であり荒涼とした現実なのである〉
昨今、不倫をした著名人がことさらバッシングに遭いがちなのは、こういった現実に対するバックラッシュのような部分もあるのかもしれない。
(田中 教)
最終更新:2018.10.18 01:56