現在全国に35万人〜40万人いるといわれている風俗嬢のなかで、月収25万円以下の人は全体の63%、そしてその半分近くは月収10万円以下との調査データもあり(「実話ナックルズ」16年4月号/ミリオン出版)、いまや体を売ってもその収入で食べていくのは至難の業となりつつある。
その典型例が、『熟年売春 アラフォー女子の貧困の現実』(中村淳彦/ミリオン出版)に登場する53歳の風俗嬢・安西貴子(仮名)さんだ。20歳から風俗業界で生計を立てていた安西さんだったが、48歳のときに働いていた風俗店がなくなってしまった後は、ついに体を売って生計を立てることすらできなくなってしまう。これには安西さん自身の加齢による事情もあるようだが、理由はそれだけではない。やはり、風俗業界そのものがなかなかお金を稼ぎづらい業界になってしまっている。
安西さんもつい最近まではギリギリではありつつも風俗でなんとか食べていくことはできていた。若い頃は月収40万〜45万円、最近でも20万〜25万円稼げていたからだ。だが、急変したのはここ最近。「苦しくなったのは3、4年前かな。震災の後から、どこの店も雇ってくれなくなって。本当に断られすぎて疲れました」と語る彼女は現在、今でもつながりのある元指名客と直で取引して個人売春を行い、月収9万円ほどで暮らしているという。ここまでくると生活保護など福祉との接続を考えたほうがいい状態だが、申請するための知識を教えてくれる人も周囲にいないので、生活保護を受給するということに思いいたらず、厳しい生活を続けている。
また、熟女系風俗店のメッカ・鶯谷のデリヘルで働く50歳の渡部美幸(仮名)さんも、同様に稼ぐことができなくなってしまった事例だ。20年前に風俗業界入りし、はじめは月収50万ほど稼げていたが、その状況は99年に風営法が改正されてデリヘルが激増したころから風向きが大きく変わる。10年ほど前からは風俗で稼げる額が月20万を割り、いまでは本番風俗店で働きながらも、出勤して1日中お店にいても1万円稼げればいいほうだという。
風俗業界がこのように稼げない世界になってしまった理由は複合的だ。長引く不景気も理由の一つとしてあげられるだろうし、男たちの風俗離れというのも大きな要因であろう。出会い喫茶やJK産業など、既存の風俗産業とは違う法的にグレーな場所で体を売り・買う行為が横行しているということも関係しているだろう。