現在、世界的に検証がはじまった、世界各国の要人や著名人らがタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用して資産隠しを行っていた疑惑が表面化した「パナマ文書」では、警備保障会社大手セコム創業者・取締役最高顧問の飯田亮氏と元取締役最高顧問の故戸田寿一氏が保有するセコム株の一部(当時の取引価格で計700億円を超す大量のセコム株)が日本の相続税回避目的で、タックスヘイブンを利用していたのではないかと見られているが、「パナマ文書」どころではなく、日本でも日常的に富裕層の租税回避行為が行われていることが明らかになったのだ。
それにしても、ユニクロは「月300時間超の労働」を労働者に強いていたことが裁判所に認定されている(2013年)。ドンキホーテも従業員に違法な長時間労働をさせていた疑いで東京労働局の家宅捜索を受けている(2015年)、ベネッセは、追い出し部屋(人財部)を使った違法なリストラで(2013年、東京地裁)、「第2回ブラック企業大賞2013」の「教育的指導賞」を受賞するなど、いずれも日本を代表するブラック企業の最大手ばかり。労働者を酷使して、コストを押さえ、ボロ儲けしたカネは日本の租税回避をたくらみ、一族で独占しようとする。
彼らは法律にのっとって「適正に」処理をしたと言い逃れするだろうが、本来は、こうしたボロ儲けしたカネは日本で「適正に」納税され、社会福祉や教育、地域のインフラなど、国民の厚生を向上させるために再配分(所得再分配)されるというのが財政・租税の基本原理だ。こうしたカネが「適正に」租税回避をし、海外に出ていってしまっては、日本の貧困化が加速するだけなのだ。
海外に流出する総額は定かではないが、日本銀行の調査によれば、タックスヘイブンのひとつ、所得税のないイギリス領ケイマン諸島への日本の投資残高だけでも2012年末時点で、55兆円にも及ぶという。
55兆円は投資残高だが、かりに、この55兆円が金融所得だとして、日本の金融所得の税率である20%をかけてみれば、単純計算で11兆円の税負担が宙に浮いている計算になる。