はじまりは一昨年9月、川内原発をめぐる『報ステ』の報道に対して原子力規制委員会がいちゃもんをつけ、BPO案件となったことだった。安倍政権の応援団はこれを使って、『報ステ』に露骨なプレッシャーをかけはじめる。
翌10月には、テレ朝の放送番組審議会の席上で、同会の委員長を務める幻冬舎の見城徹社長がコメンテーターの恵村順一郎氏を「頓珍漢極まりない」と批判した上で、「官邸を評価できるとこは評価すべき」「現政権に批判、批判と考えないほうがいい」と発言した。
見城氏は周知のように、安倍首相の応援団の筆頭格とされる人物で、テレ朝・早河洋会長と安倍首相の間を取りもったパイプ役でもある。
さらに、昨年1月末には、イスラム国問題をめぐるコメンテーター・古賀茂明氏の「I am not ABE」発言に菅義偉官房長官が激怒。記者たちとのオフレコ懇談で「本当に頭にきた」「俺なら放送法に違反してるって言ってやるところ」と、放送法をたてにした圧力をちらつかせた。
そして3月になると、古舘氏が信頼を寄せ、番組の反権力スタンスを守ってきた番組統括の女性チーフプロデューサーの更迭、さらには官邸や安倍応援団から標的にされていた古賀茂明氏、恵村順一郎氏のコメンテーター降板が決まってしまったのだ。
これに対して、古賀茂明氏は最後の出演で「官邸の圧力で降板」になったことを暴露するのだが、この発言についても自民党は“放送法に違反した疑いがある”として、4月にテレ朝経営幹部を呼び出し、事情聴取を行うという暴挙に出た。しかもその後、高市早苗総務相はテレ朝に対し「厳重注意」とする文書を出している。
これら一連の経緯をみれば、安倍政権から『報道ステーション』に「圧力」がかかっていたのは、まぎれもない事実だろう。
実際、昨日の最後の放送で、自分への「直接の圧力はなかった」と言った古舘氏も、その後、こう言葉をつないでいた。
「ただ、このごろは、報道番組で、あけっぴろげに、昔よりもいろんな発言ができなくなりつつあるような空気は、私も感じています」
そして、番組のコメンテーターを務めた政治学者の中島岳志氏の弁を紹介しつつ、現在のテレビ報道が危機にあることを視聴者に告げたのだ。