「日本死ね」というのは怒りを国の政策にぶつけたものだが、「書いた人間が死ねばいい」というのは個人に対する明白な暴言である。しかも津川の発言が恐ろしいのは、「日本に逆らうような者は死ねばいい」と言っているに等しいことだ。
以前も本サイトでお伝えしたように、津川といえば、特攻隊を礼賛したり、徴兵制の復活を訴えたりというネトウヨ脳の持ち主。左翼や朝日新聞を徹底的に敵視し、それらが日本人を堕落させたと主張、挙げ句には東日本大震災について「キリストの如く贖罪適格者として白羽の矢が当てられたのが、日本の元祖である東北の人々」と述べたこともある。「書いた人間が死ねばいい」という暴言が出てくるのも頷ける人物だ。
だが、津川の発言以上に背筋が凍ったのは、津川がこの暴言を吐いたあと、スタジオでは大きな笑い声が起き、司会の辛坊も大爆笑して見せた場面だ。読売テレビはこんなグロテスクな内容を、よく躊躇わず日曜の真っ昼間から放送したものである。
そもそも、この『そこまで言って委員会』という番組は、本サイトでも繰り返し指摘しているように“地上波のチャンネル桜”と呼ばれるほどで、毎度と言っていいほど嫌韓反中発言が飛び交い、ネトウヨの養成に一役買ってきた番組だ。
それだけでも放送倫理上、大きな問題を抱えた番組だと言わざるを得ないが、最大の問題は、このような番組に、安倍首相が何度も出演しているという事実だろう。
現に安倍首相は、昨年9月4日、国会での安保法制の議論の真っ只中に、わざわざ大阪入りして同番組に出演。首相に返り咲いた後の2013年には1月と6月になんと2回も出演し、首相ではないあいだには11回も出ている。つまり、このヘイトにまみれた番組を、安倍首相はたいへんお気に召しているようなのだ。
それも当然だ。番組には前述の辛坊や金、竹田恒泰といった安倍首相の応援団が数多く出演しており、実際、津川雅彦は「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」発起人のひとりであり、金美齢も代表幹事を務めていた。安倍首相が番組に出演すれば、そんな応援団がパネラーとして揃い、暖かく迎えてくれる上、自分の主張を先回りして肯定してくれる。しかも今回の津川らの発言に顕著だが、自分が出演していないあいだも応援団は周辺国の脅威を煽り、一方で保育園問題などの政権を批判する声をも封じるような内容を地上波で放送してくれる。安倍首相がひいきにするのも無理もない。
だが、逆にいえば、これこそが“偏向報道”の極みではないか。安倍首相が言う「公平中立」や、放送法の「不偏不党」に抵触しているのは、まさにこの番組のほうだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2017.11.24 09:10