『異類婚姻譚』(講談社)
つい先ほど発表された、第154回芥川賞に『異類婚姻譚』(講談社)の本谷有希子が選ばれた。『死んでいない者』(文藝春秋)の滝口悠生とのダブル受賞である。
本谷有希子といえば、ご存知の通り、2011年に『ぬるい毒』(新潮社)で野間文芸新人賞、13年に『嵐のピクニック』(講談社)で大江健三郎賞、14年に『自分を好きになる方法』(講談社)で三島由紀夫賞を受賞と、キャリアを重ねた小説家で、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(講談社)は監督・吉田大八、主演・佐藤江梨子で映画化もされている。
そんな本谷だが、もともとは小説家ではなく、劇作家・演出家としてキャリアをスタートさせた。00年には、当時20歳という若さで「劇団、本谷有希子」を創立。07年には『遭難、』で鶴屋南北戯曲賞を、09年には『幸せ最高ありがとうマジで!』で岸田國士戯曲賞を受賞するなど高い評価を受けている。
小説家としても、「劇団、本谷有希子」としても、まさに華々しいばかりの成功をおさめてきた本谷だが、この「劇団、本谷有希子」での彼女、実はかなりの“キチク”な所業を重ねていたようなのだ。
劇団旗揚げのための資金は祖母からせびり、その後もことあるごとにお金を出させた。しかし、そのように祖母をパトロンにする一方、劇団員へのギャラはなんと0円。しかも、本谷は「何であげなきゃいけないの?」とまで言い放っている。
その「キチク」っぷりは、稽古の時にも遺憾なく発揮。スパルタ過ぎる演出で役者が血尿出したり、円形脱毛症で髪が抜けたりするのはザラ。しごきまくった俳優に「しんどくて電車に飛び込みそうになりました」と言われたことまであると言う。ただ、そのような言葉を受けて反省するかと言えばそんなことはない。彼女にとって役者は「人」でなく「モノ」。「最初、役者を人として見てないんだよね。演出家って嫌な人多いのかも(笑)」と恐ろしい発言も残している。
もしも自分がその劇団の役者だったら……、と想像するだけでも鳥肌が立つような話だが、常人には理解し難い、そのような「狂気」を孕んだ人格だからこそ、人々を魅了する芸術をつくりあげることができるのかもしれない。
当サイトではかつて、そんな本谷有希子のキチクっぷりについて記事にしたことがある。芥川賞受賞記念に再録するので、是非とも読んでみてほしい。
(編集部)
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昨年、『自分を好きになる方法』(講談社)で三島由紀夫賞を受賞した作家の本谷有希子。アニメ『彼氏彼女の事情』で声優デビューしたり、『本谷有希子のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)でブレイクするなどマルチ活躍で知られるが、もともとは劇作家・演出家。2000年に、20歳という若さで、専属の俳優を持たず、毎回役者が全て入れ替わるというユニット形式の「劇団、本谷有希子」を旗揚げして注目を集めた。
その本谷が、『新潮45』(新潮社)1月号で、やはり劇団「鉄割アルバトロスケット」を主宰する戌井昭人と対談。劇団立ち上げの頃の思い出話を語っているのだが、そのキチクっぷりがちょっとした話題になっている。