『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)
Apple Music、AWA、LINE MUSICなど、定額制の音楽ストリーミング配信サービスが次々とスタートした昨年。「ストリーミング元年」とも呼ばれ、CD売り上げ不振にあえぎ低迷する音楽業界の新たな起爆剤になるかもしれないと期待が集まった。
このように、2015年は音楽業界にとって大きな分水嶺となった年だったわけだが、同年4月、もうひとつ音楽業界の未来を左右する出来事が起こっている。
日本音楽著作権協会(JASRAC)が、他の事業者の参入を妨害しているとして、最高裁で独占禁止法違反にあたると認められたのである。
我が国ではこれまでずっとJASRAC、およびその前身団体である大日本音楽著作権協会が音楽著作権管理業務を独占してきた。その歴史は1939年から長きに渡る。実は、39年に仲介業務法が施行され、JASRACが許可申請を提出した時、大日本音楽作家出版者協会という団体も続いて著作権仲介業務の許可申請をしているのだが、内務省は「音楽分野では一団体に限る」とし、許可を与えることはなかった。ここから、その後、半世紀以上続くJASRACの独占が始まるのである。
しかし、2001年、参入規制を緩和した著作権等管理事業法が成立することで、他の民間の会社も著作権管理事業に参加することになる。他の会社の参入により競争原理が働くことで、手数料の引き下げや、新たなビジネスの創出が期待されたのだが……結果、競争どころか、JASRACは既得権益を守り続ける動きに出たのである。
JASRACに異議申し立てをし、独占禁止法違反の判決を引き出した主人公、著作権管理事業会社である株式会社イーライセンスの会長・三野明洋氏が、その戦いの歴史を綴った本『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)を先ごろ出版。また、それに伴い、多くのメディアでJASRACのこれまでのやり方がいかに横暴であったかを暴露している。