ひとり親を支援しているというこの人物は、稲田氏がシングルマザーや婚外子の救済策をことごとく潰し、離婚の大きな原因となっているDV被害を訴える女性たちを攻撃していることを知らないのだろうか、と疑問を感じてしまうが、それはともかく、古市はこのように、知人を気軽に紹介できるほど稲田と関係を深めているようなのだ。
そして、この密接な関係の延長線上で、冒頭の「歴史を学び未来を考える本部」オブザーバーのオファーもきたということらしい。
なんとも気色の悪いいきさつだが、まあそれでも、あの“空気を読まない”キャラクターで、安倍チルドレンと右翼論客が行う歴史修正主義の議論を引っ掻き回してくれるなら、古市くんが同本部にコミットする価値はあるかも、と思わなくもない。
ただ、残念ながらその可能性も極めて低いだろう。というのも、弱者に対しては空気を読まない古市くんだが、強い相手には、過剰なくらいに「空気を読む」からだ。
その典型例が、「第2期クールジャパン推進会議」の委員に選ばれた時の自己検閲事件だ。実は、古市はその1年ほど前、「新潮45」13年11月号で政府のクールジャパン政策を批判。担当大臣の稲田がロリータファッションを披露したことを取り上げ、「世間の生暖かい視線を浴びた」と皮肉たっぷりに書いていた。
ところが、この文章の発表後、古市は「クールジャパン推進会議」の第2期メンバーに選ばれてしまう。その後、『だから日本はズレている』(新潮新書)という本を出版、同書に「新潮45」のクールジャパン批判も収録されることになったのだが、その際に古市は「生暖かい視線」という表現を「暖かい視線」に改竄してしまったのだ。たかが一文字だがエラい違いである。稲田に気を使ったのは明白だ。
しかも古市くん、この“自己検閲事件”について、「an・an」(マガジンハウス)14年4月16日号での朝井リョウとの連載対談のなかで、こんな開き直り発言をしていた。
「(稲田のコスプレいじりは)別に悪意はないよ。ただ、もっと似合うコスプレがあったんじゃないかなって。それに雑誌ではそう書いたけど、本にまとめた時『生』は消したから大丈夫」
「大丈夫」って……この一言を読めば古市が向いている相手が読者でなく、稲田であることがよくわかるだろう。