経団連ビジョンや会員企業の政治献金再開の動きを受けて、安倍政権は日本経済活性化につながるとして、経団連ビジョンをそのまま与党の2016年度税制改正大綱に反映させた。法人実効税率は現在の32.11%から17年度に29.97%、18年度に29.74%まで下がることになった。
これを受けて、経団連の榊原定征会長は「国内の事業環境が海外と同等になる大きな一歩を踏み出した」と歓迎。法人税減税で浮いた資金を元手に、国内での設備投資や賃上げを加盟企業に呼びかけるという。
ただし、この法人税減税が日本経済活性化(賃上げ、設備投資)に結びつくとは考えにくい。
元大蔵官僚で経済学者の野口悠紀雄は、「DIAMOND on line」の連載「新しい経済秩序を求めて」で「法人税を減税しても企業は内部留保を増やすだけ」だと指摘している。野口によると、「法人税を減税すれば、企業の税引き後利益が増える。だから、配当が増えるか、利益剰余金が増えるかだ。他の条件が変わらなければ、利益剰余金が増えるだろう。しかし経済的な条件が変わらない限り、それは、金融資産への投資や金融機関からの借入返済を加速するだけ」だという。
実際、これまでも、安倍政権下で行われた法人税減税(復興特別法人税の前倒し廃止)は企業の内部留保(金融資産投資)を増やすだけにとどまっている。
なんと、財務省が12月1日発表した7~9月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業がため込んだ内部留保は301.6兆円。大企業の内部留保が初めて300兆円を突破したのだ。これは、安倍政権が発足する直前、2012年7~9月期の263.2兆円から38.4兆円も急増していることが明らかになったのだ(「しんぶん赤旗」2015年12月3日付「内部留保300兆円突破 財務省統計 安倍政権で38兆円増」)
ようするに経団連に加盟する大企業にとって、法人税減税分というのは内部にためこむか、株式市場に投資する軍資金でしかないのだ。
経団連はさらに内部留保を増やそうと「2017年度以降も、OECD諸国や競合するアジア近隣諸国並みの25%への早期引下げに向けて、法人税改革を推進」するために、政治献金を増やす。
その一方で、経団連は法人税減税の穴埋めも経団連ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」で提言している。それが、消費増税だ。「(政府は財政健全化へのより強いコミットメントを示すとともに)さらに、中長期的に持続可能な財政構造を確立するためには、消費税率を欧州諸国の水準にならい、2030年までに10%台後半に引上げる必要がある」とするのだ。