一連の朝日の誤報問題でも、読売と産経は官邸の情報リークにのって吉田調書の些末な誤報をあげつらい、本質隠しに協力するなど、その権力御用体質をいかんなく発揮した。
今回のソウル支局長起訴問題で、産経新聞の熊坂社長は「今後も産経新聞は決して屈することなく、『民主主義と自由のために闘う』」などという声明を出したが、そういう意味では、産経は「言論の自由」とはもっとも縁遠いメディアだったのである。
実際、今秋の問題でも産経はすでに姑息なところを見せている。問題になった記事は「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」という男性関係を詮索するゴシップ記事なのに、社長声明では記事の内容を「朴槿惠大統領の動静をめぐる韓国国内の動きを日本の読者に伝えたもの」と微妙にそれを糊塗する一方、今回の問題を韓国のインターネットに責任転嫁するような記事も掲載している。自分たちの記事は日本国内向けなのに、インターネット媒体『News Pro』がそのコラムを無断で韓国語に全訳し、恣意的論評を加えて、国内に拡散させたせいだ、と。
起訴がおかしいと考えているなら、堂々と「言論の自由」を訴えればいいのに、それができないというのは、この新聞社が根本的に「言論の自由」に価値をおいていないからなのだろうか。
しかし、それでも、今回の問題で産経新聞を支援し、韓国政府と検察当局を徹底批判したい。それが仮に言論の自由をつぶそうとするメディアであろうと、その言論をも守るというのが、本当の意味で「言論の自由を守る」ということだから。
(神林広恵 元「噂の真相」編集者)
最終更新:2015.12.17 09:36