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予備自衛官を雇ったら法人税減税! 自衛隊志願者やっぱり激減で、安倍政権がいよいよ経済的徴兵制を具体化

 しかも、前原氏が発言した奨学金の返済に困っている人に対するインターンシップ制度にしても、導入が検討されてもおかしくはない。いや、アメリカ並みの奨学金制度の構築なども検討しなくては、安保法制後の自衛隊を支えることはもはや難しいのではないか、とも思えてくる。その上、自己責任論が幅を利かせるいまの日本の空気では、「国の金で大学に行くのなら、それくらい奉仕して当然」などという声もあがりかねない。

 だが、忘れてはならないのは、本書でも言及されている通り、アメリカでは〈退役軍人の学生のうち八八%が初年度で退学し、卒業するのはわずか三%〉〈とりわけアフガニスタンやイラクからの帰還兵はPTSDなどで通学を継続するのが容易ではない〉という事実だ。インターンシップといえば聞こえはいいが、農業体験や地域奉仕活動などとは根本的にまったく違う。安保法制成立後の自衛隊に入るというのは、戦地に赴くという命がかかった問題なのだ。

 本来は「貧しいけれど大学に行って勉強したい」という若者の願いは、社会制度によって叶えられるべきだ。それを命と引き換えにしなくてはならないとなれば、この国で生きるのに夢などもてるはずもない。

 そもそも、「経済的徴兵制」には、経済界の思惑も密接にかかわっている。経団連などの経済界は集団的自衛権の行使を積極的に政府へ要請してきたが、既報の通り、その裏側には武器輸出の問題が絡んでいる。本書でもその問題は深く掘り下げられているが、〈自衛隊の海外での活動の拡大が、そのまま武器輸出ビジネスに直結〉しているのである。

 布施氏は、本書のなかでこう述べている。

〈政府が自衛隊(自衛官の死)を海外での国益追求のツールとして活用しようとしていることと、国内で非正規雇用を増やして貧困と格差を広げるような政策をとっていることには、底流に共通する思想がある。それは、国民一人ひとりの人権や生命より国策や国益を優先させる思想である。国民を、国策や国益実現のための「資源」として捉えているのだ〉

 安保法制を考える上で「経済的徴兵制」は切り離しては考えられない重要な問題だ。「経済的徴兵制」というと、徴兵制よりソフトな印象をもっている人もいるかもしれないが、ある面では徴兵制以上に悪質なところもある。戦争を決定する人間と実際に戦地で戦わされる人間が完全に分離し、為政者や経済的強者は戦場の悲惨な実態も痛みも知ることがないまま戦争を遂行することになり、歯止めがきかない。不幸な国の負のスパイラルに陥るかどうかという、誰にとっても他人事ではない話なのだ。甘言を弄する安倍首相に騙されないためにも、ぜひ一人でも多くの人に本書を読んでほしいと思う。
(水井多賀子)

最終更新:2015.12.14 07:27

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