『経済的徴兵制』(集英社新書)
やはり安倍政権は「徴兵制」を目論んでいる──そう思わざるを得ないニュースが報じられた。なんと、政府と自民党が「予備自衛官などの雇用を増やした企業に対して法人税を控除する」というプランをもちだしたのだ。
予備自衛官とは、有事のときに予備要員として召集される非常勤の自衛官のこと。この予備自衛官の数は2005年には4万1744人だったが、昨年は3万7271人と減少傾向にある。そのため防衛省は、予備自衛官を2人以上、かつ10%以上増やした企業に対し、1人あたり40万円の法人税控除を行う要望案を提示。自民党の国防部会がこれを先月17日に了解したという。
1人あたり40万円も法人税が控除されるとなれば、企業側にとってはかなり大きい。この案が実現すれば、企業は積極的に予備自衛官を雇用し、求職者にとっても予備自衛官であることが採用アピールにつながるだろう。つまり、この予備自衛官雇用の法人税控除案は、間接的な「経済的徴兵制」と言えるものだ。
安倍首相は安保法制議論で徴兵制について「典型的な無責任なレッテル貼り」と否定、憲法違反の安保法制を押し通しながら「徴兵制は明確に憲法違反」などと明言してきた。だが、安保法制に反対する人びとが懸念しているのは、むしろ「経済的徴兵制」の問題だ。
たとえば財務省は、先日、国立大の授業料の大幅値上げを発表。現在の国立大の授業料は標準で54万円だが、2031年度には現在の私大平均授業料(約86万円)よりも高い93万円まで引き上げるとしている。非正規雇用が4割、子どもの貧困は過去最低の16.3%という現在の状況から考えても、この授業料引き上げは実質的に「経済的徴兵制」を加速させることは間違いない。
実際、安保法制の成立によって自衛隊は「経済的徴兵制」なくしては成り立たないことは明白な事実だ。ジャーナリストの布施祐仁氏が先日、上梓した『経済的徴兵制』(集英社新書)のなかで、その問題点に多岐にわたる角度から鋭く切り込んでいる。