「アリさんマークの引越社」公式サイトより
先日11月29日、「週刊SPA!」(扶桑社)のweb版が「ブラック企業大賞はただの企業イジメ」と題して、同賞にノミネートされていたアリさんマークの引越社の井ノ口晃平副社長のインタビューを先行配信し、「ブラック企業大賞をエサに企業恐喝まがいの行為をして、金銭を要求することが真の目的」などという副社長の言い分をそのまま掲載していた。
本サイトは翌日11月30日の記事で早速、その内容がまったくのデタラメであるとして、ブラック企業大賞側の反論をお伝えしたが、もうひとつ、根本的な問題を指摘しておかねばならない。
それは、アリさんマークの引越社(以下・引越社)が、まさにブラック企業大賞「アリえない賞」受賞に値する、ありえないレベルのブラック企業であるという事実だ。
同社では、長時間労働や残業代未払いはもちろん、引越し作業中の荷物破損や車両事故の損害を社員に弁償させるというとんでもない制度をしいていた。弁償金分の借金を背負わされ、毎月給与から弁償金を天引きされ、辞めるに辞められない状況に追い込まれている社員もいる。
また、ブラックな労務管理を変えようと、組合に加入した社員に対して、同社は追い出し部屋への異動を命じ、さらにはへイトスピーチ的な攻撃まで行っていた。
ところが、「SPA!」はこれらの問題についてはほとんど触れず、逆に井ノ口副社長の自分たちが被害者であるとするような言い分だけを一方的に垂れ流したのだ。
そのひとつが、社員A氏をめぐる労働争議の問題だ。A氏が追い出し部屋に異動、懲戒解雇された問題で、プレカリアートユニオンという組合が会社前で抗議活動として街宣を行ったところ、井ノ口副社長と本部長がヤクザまがいの態度で恫喝。その模様がネットで配信され、週刊誌で取り上げられたのだ。
これについて、井ノ口副社長は「SPA!」で、問題のある社員に懲罰人事を命じただけなのに、ユニオンから理不尽な要求をつきつけられた、恫喝の動画もユニオンにはめられた、というようなことを言っているのだが、取材してみると、これはまったくのでたらめだった。