同ユニオンの清水委員長によると、「SPA!」で井ノ口副社長が語っていることは、他にも嘘だらけだと言う。
「Aさんの懲戒解雇処分も取り消した、こちらが悪いところはすべて認め、改善した、と言っていますが、引越社は懲戒を取り消しながら、Aさんに謝罪もせず、まだシュレッダー係のままにしている。しかも、明らかな名誉毀損である解雇通知書をグループ会社全社員(約4000人)が読む社内報にも掲載しています。だから、私たちも抗議を続けているんです。
また、井ノ口社長は、『これまでも会社に不満のある従業員とは話し合いで解決できた』『妥結案を話し合っているのに『生涯賃金を払えば許すとか法外な要求をしてくる』などと、まるで私たちがいいがかりつけているかのように語っていますが、これは話が逆です。
私たちはもともと引越社の複数の退職者が払わされた弁償金の返還と弁償制度を求めて団体交渉を続けていたんですね。当初は向こう側の弁護士もある程度、こちらの主張を取り入れてくれて、両者で妥結策を模索していたところでした。ところが、その弁護団が突如、辞任して、会社側が強硬姿勢に転じたんです。
A さんについても、『生涯賃金を支払え』なんて要求していませんよ。私たちが要求しているのは営業職への復職。それなのに、会社側は『金を払うから辞めろ』といってきてるんです。Aさんがそれでも辞めないで頑張っていたら、とうとうああいうヘイトスピーチのビラまで張り出したということです」
聞けば聞くほど、そのえげつなさと厚顔ぶりに驚かされるが、アリさんマークの引越社からこうした圧力、恫喝、嫌がらせを受けている社員はA氏だけではないという。多くの社員が過重労働にもかかわらず残業代をもらえず、事故を起こすと違法な弁償金を支払わされる、という目にあいながら、会社の恫喝によって、泣き寝入りをしてきた。
さらには、ヘイトスピーチも今回たまたま、ということでなく、同社の体質らしい。同社の管理職研修では、採用NGの対象として、「労働基準法に詳しい人」などの条件以外に、「三国人、ミツ、ヨツ」などの差別用語を使いながら、「韓国人」「朝鮮人」「被差別部落出身者」を採用しないように指導されることを、複数の社員・元社員が証言している。
ブラック企業の経営者とヘイト・ネトウヨ思想の親和性はよく指摘されることだが、まさかここまでとは……。
現在、アリさんマークの引越社の労働被害については、元社員が続々と声を上げており、集団訴訟も起きているが、ぜひこの差別問題も合わせて追及してもらいたい。
それにしても、「SPA!」はなぜ、こんなありえないブラック企業の肩を持つ記事を掲載したのだろうか。たしかに親会社の産経新聞は企業やヘイト勢力の全面的な味方だし、扶桑社もたくさんヘイト本を出版しているが、「SPA!」はブラック企業追及記事を頻繁に掲載するなど、一定の見識をもっているという風に認識していたのだが……。
(編集部)
最終更新:2015.12.03 06:04