ただし、今回の『下町ロケット』にかんしては、おそらく“主犯”は福澤だろう。というのも、原作では、娘はまだ中学生で物語にもほとんどからまず、反抗期だった娘が慶應理工学部を目指す、というのはドラマのオリジナルだからだ。
いずれにしても、銀行員ならともかく、宇宙ロケット開発者まで無理やり慶應設定にしたがる母校愛って……。
ちなみに、早稲田出身の堺雅人は、ドラマを通じて慶應出身者との「自意識」の違いをこう分析している。
〈自分が早稲田を代表するつもりはないんですが。自分の自意識を考えると、目立ちたいんだけど、わかりやすく目立ちたくなかったり、ちやほやされたいけど、そんなに表立ってちやほやしてほしくもないし、ちやほやされると逃げ出したくなる。まあ、少しというかかなり屈折した、わかりにくい自己顕示欲があるんです。そういった部分は自分でもちょっと持て余し気味(笑)。でも半沢には、それがない。“衒い”がないんです。僕の勝手なイメージだけど、早稲田には在野精神というか野党根性というか、ちょっとひねくれたところがある気がします。慶應は照れない。そう考えると、自分が慶應の人間を演じているというのは面白いですね〉(前掲書より)
「“衒い”がない」「照れない」。だからついつい「母校愛」が作品ににじみ出てしまう。そんな慶應ボーイたちのメンタリティが、視聴者の頭に「?」マークを浮かべさせた『下町ロケット』のセリフには隠されているのだ。
次回から『下町ロケット』は、重度心臓弁膜症患者向けの人工弁の開発プロジェクトに携わる「ガウディ計画編」に突入。こちらにも「慶應」の名は登場するのか否か。注目しながら見ていきたい。
ちなみに、先ほど述べたように慶應大学では航空宇宙工学を学ぶことは難しい。『下町ロケット』を見て感動し、「将来はロケットをつくりたい!」と夢を抱いた学生諸君は勘違いしないように。志望校はちゃんと学校案内を読み込んでから決めることをオススメしたい。
(本田コッペ)
最終更新:2015.11.17 12:00