『「キャバクラ」の経済学 なぜ、男たちは「彼女」に財布を開くのか?』(イースト・プレス)
2016年の1月からいよいよ本格的な運用が開始されるマイナンバー制度。情報流出の危険性など、運用開始前から不安視する声の絶えない本制度だが、このマイナンバー制度が導入されることにより、大ダメージを受けるのではと囁かれている業界がある。
それは「キャバクラ」だ。キャバクラ嬢は会社や家族に内緒で副業として働いている人も多いのはよく知られた話だが、ではなぜ今まではその副業がバレずにすんでいたのか? その秘密は、彼女たちがお店と一般的な社員・アルバイト扱いの雇用関係を結んでおらず、「個人事業主」扱いとして働いていることにある。
個人事業主である彼女らは、本来であれば毎年確定申告を行わなければならないのだが、お店がその旨を教育していなかったりするケースが多く、申告していない人が多い。であれば、税務署から連絡が行かないと本当はおかしいのだが、税務署も収入の実態把握が難しく、またその数の多さにひとりひとり追いかけるようなことは今までしてこなかった。だが、マイナンバー制度が始まれば、収入の把握は容易になり、これからは確定申告を行わないということはできなくなる。すると、副業の所得も住民税に反映され、会社にバレることになるのである。
そのことについて、最近出版された、山本信幸『「キャバクラ」の経済学 なぜ、男たちは「彼女」に財布を開くのか?』(イースト・プレス)にはこのように書かれている。
〈マイナンバー制度が始まったことによって、キャバクラ運営会社はキャバクラ嬢も含めて店で働く人のマイナンバーを収集しなければならなくなった(中略)。
会社に内緒でWワークをしている会社員の女性や夫に黙って働いている主婦も困ったことになる。女性会社員は個人住民税を会社が「特別徴収」という給料天引きの方法で徴収(地方税法上の義務)している。副収入がある人は会社に申告してまとめて「特別徴収」してもらうか、市区町村から送られてくる納税通知書を使って自分で納める「普通徴収」に切り替えるという方法があるが、特別徴収を普通徴収に切り替えると副業禁止が徹底している会社ほど副業を疑う(←ココが重要)ようになる。コンプライアンス絡みで調査が入るかもしれない。
これまでは特別徴収のままにしておいても、この業界は本人の特定が難しいためにバレにくかった。だが、2016年以降(マイナンバーを使った最初の確定申告は2016年の収入を2017年の確定申告期間に行うとき以降)はマイナンバーによって名寄せされて会社の収入もキャバクラの収入も税務署に把握され、特別徴収のままでは恐らく会社にバレるのではないか。といって普通徴収にすると、今度は会社に怪しまれる〉