お寺のなかでもっとも重要な存在であるはずの御本尊様を換金し、当たり前のように檀家に嘘をついてしまうとは、“有り難み”などあったものではない。
とはいうものの、仏様を売却しただけで、一般市民からお金を巻き上げているわけではないので、まだマシだという見方もできる。なかには、一般市民を騙して儲けるお坊さんもいるのだ。
「『祟り』といったものは、坊さんにとって逆に打出の小槌になるものです。悩み苦しんでいる人々にとっては、どんなに有り難い思し召しよりも、またどんな立派な説教よりも『祟りによるものでしょう』といったひと言のほうが威力を発揮するものです」
つまり、困っている人がいたら、とりあえず「祟り」のせいにすれば、自然とお金を生み出してくれるというのだ。
「『祟り』と聞いた途端に、人々のサイフのヒモは大いに緩んで、誰もがダンゴや饅頭でお布施をごまかそうなどとは思わなくなります。お祓いの祈祷に至りましては、上限なしのハッタリ三昧です」
“祟りのせいにしてお祓いをする”という最強コンボは、お坊さんとっての鉄板のドル箱。これで儲けているお坊さんがたくさんいるのだという。
さらにボロ儲けの定番となっているのが「水子供養」だ。そもそもは、供養してほしい人が寺院を訪れ、そこで供養してもらうのが一般的だったが、あるお坊さんのアイディアによって、革命的なビジネスへと発展する。
「あるとき忽然と『これはイケる』と思い立った坊さんが、商才たくましくも全国規模で大新聞にデカデカと『水子供養をしないと祟りが起こりますよ』などと言わんばかりの大広告を打ち出しました。
さらに、『お寺に来られなくても、現金書留でお金を払い込んでいただければ供養一切を承ります。当然、お宅様の秘密は厳守します』などと、都合のよいとどめの一文で水子供養を広めました」
水子供養を依頼する人は、なにか後ろめたいことを抱えているケースが多く、寺院に直接行かずに供養ができれば、それはかなり都合がいいことだ。目立つことなく人知れず水子供養をしたい──そんな人々の願望を上手につついて、効率的に稼ごうというお坊さんが現れたのだ。