「地元山口県長門市油谷町で行われた農業ファッションショー」に参加してきたと報告する安倍首相だが…(安倍晋三Facebookより)
自民党総裁選で無投票再選を決めた安倍晋三首相。立候補をめざしていた野田聖子前総務会長が推薦人を集められないように、安倍の側近議員や業界団体が圧力をかけた結果だったが、残念ながら、自民党内からはこうした“安倍独裁”への批判や疑問の声はほとんど聞こえてこない。
だが、その一方で、意外な場所から安倍批判の声が上がっている。それは、“安倍家発祥の地”といってもいい地元・山口県の旧油谷町だ。
山口県北西部、日本海に面したこの小さな町は10年ほど前に同県長門市に吸収合併されたが、晋三の父方の祖父・安倍寛の生家のあった場所で、父親の晋太郎も幼少期をここで過ごしてる。今も父・晋太郎の墓所はここにあり、晋三もここに事務所をおいている。
そんな町でまさか、と思うかもしれないが、これは事実だ。
この知られざる地元事情について指摘したのは、「AERA」(朝日新聞出版)が連載しているジャーナリスト・青木理の「安倍家三代 世襲の果てに」。この連載はタイトルからもわかるように、安倍首相の祖父・安倍寛、父親・晋太郎との対比から、政治家・安倍晋三の実像に迫ろうというルポルタージュで、最近、完結したばかりの第1部では、戦中に大政翼賛会から推薦を受けずに当選した反骨の政治家・安倍寛がいかに平和主義をつらぬき、地元の人から愛され尊敬されていたか、を描いていた。
ところが、それと同時に、このルポでは、かつて安倍家の近くにいて、寛や晋太郎を熱心に支持してきた人たちの安倍晋三に対する厳しい批判の声を紹介しているのだ。
たとえば現在、安倍家の近隣で農家をしながら、地元紙に漫画の連載もしている広中建次氏(60)。かつては父親の晋太郎の評伝漫画『あべ晋太郎物語』の作画を担当するほどだったが、一転、晋三についてはこう評している。
「あの人は言葉が軽すぎるんだ。すぐに『絶対ありません』。批判されると『丁寧に説明する』。丁寧に説明しない奴に限ってそう言うんだよ。だいたい、あの人の地元は(東京都渋谷区)富ヶ谷でしょ。そっちから(選挙に)出てほしいよね、まったく」