だが、西室氏自身は一連の人事への介入を隠そうともしない。東芝の不正発覚後の7月22日に行われた日本郵政社長としての定例記者会見で、不正経理については「悲しい」「非常に大きなショック」などと他人事を装いながら、こんな内輪話を披露している。
「実は、(室町氏)ご本人は辞めると言っていたんですね。それで、私が東芝の相談役として絶対に辞めないでくれと。一人はリーダーシップを取る人がいなければ困るから、残る方がつらいかもしれないけれど、それをあなたに期待するということで残ってもらいました」
将来の東芝トップについても「私の方にも手を挙げている方がボチボチ来ています」「コーポレートガバナンスがわかっている人なら、弁護士、会計士、企業経営者など、適任者がいれば誰でもいい」などと、まるで自分に人事権があるかのような発言も飛び出した。
さらにこの会見で西室氏は、「(経営刷新)委員会を設置します。これは社外の方に参加していただきますが、責任者は東京理科大教授の伊丹(敬之)先生にやっていただく。(東芝の)社外取締役でもあるし、会社のことはある程度わかっている」と、未発表の人事まで“発表”する始末だった。先の経済部記者が続ける。
「それだけではありません。9月末の株主総会で室町氏は社長専任(会長職は返上)になって、新たに取締役会議長に資生堂相談役の前田新造氏が就任する予定なんですが、彼は西室さんの慶応の後輩です。ことほどさように選任される社外取締役はすべて西室さんのお友だちと言っていい。例えば、前出の東京理科大の伊丹氏は経営学者ですが、西室社長時代の東芝を絶賛していた。公認会計士の野田晃子氏は西室さんと同期(1961年)入社の元東芝社員。三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏やアサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏も、西室さんは自分が頭を下げて引っ張ってきたと話しています」
名門上場企業でありながらまるで個人商店のようなこうした振る舞いが許されるのは、安倍官邸の“後ろ盾”があるからだ、というのがもっぱらの評判だ。