その姿勢は雑誌のインタビューでも変わらない。「EX大衆」2015年8月号(双葉社)では、最近ショートカットにした件に触れながら「カミ(神・髪)は死んで、超人になります!」とニーチェにちなんだ発言をしたり、新曲の歌詞の説明をする時も「歌詞は実存主義的で、イケメンとかブサイクよりも、その人にしかない固有性や単独性が大事だと歌っています!」といった「実存主義」という、およそアイドルのインタビューには出てこない単語を登場させたりと、普通は“面白くないもの”と相場が決まっているアイドルのインタビューのなかで、かなり目を引く存在だ。
こういったクレバーで型破りなところが見城徹を虜にしてしまう魅力なのだと思うが、よく考えてみれば、須藤と同じように「言葉の力」を買われることで運営に“見つかり”、そして、権力者のオヤジをうまく転がすことで大成功した、全く同じパターンの先輩がいる。今年の総選挙で1位に返り咲いた指原莉乃だ。
彼女の著書『逆転力~ピンチを待て~』(講談社)によれば、秋元康が彼女のことを認めるようになったのは、指原がブログを始めてからで、その文章の巧みさを評価した秋元康から「ブログ、面白い」というメールが突然来たらしい。
彼女自身「ファンのみなさんや秋元さんが、私のことを「面白がってくれている」と感じたのはこの時が最初です。そう考えると、すべての始まりはブログだったんだと思います」と綴っており、それ以降、「指原が、読者に質問しているのが面白い。ラジオの葉書職人みたいに、コーナーを作ってやってみたらどう?」といった、放送作家出身者らしい懇切丁寧なアドバイスが秋元康から送られるようになったとのエピソードも語られている。
この話、須藤のケースとそっくりではないだろうか? もちろん、高学歴とかそういうことではなく“知”をリスペクトするという真新しいアイドルコンセプトを打ち立てた須藤だからこそ、インテリ女性に弱い見城徹の心を射抜いたのだろうし、指原のキャラ立ちとはすこし違う。だが、指原は秋元康をうまく転がして成り上がっていったのはご存知の通り。そう、須藤と指原に共通するのは、「言葉」の力なのだ。
「言葉の面白さ」で運営の“推し”を勝ち取り出世していくことは何も悪いことではないし、SNS全盛のいまの時代、その能力はアイドルにとってもっとも大事なスキルといえる。ただカワイイだけじゃなく、言葉でファンを掴み、オヤジをも手玉に取る……。一方的に消費されることを拒み、自らの発信力でのし上がっていく彼女たちの姿は、ある意味、小気味いいものである。
(新田 樹)
最終更新:2015.09.05 08:07