ただ、橋下市長に近い政治評論家によると、「少なくとも、橋下さんは住民投票の直後は本気で政界を引退するつもりだった」という。
それが変わったのはやはり、安倍首相、菅官房長官との会談だった。これは住民投票から1ヶ月たった6月14日夜、橋下市長が松井一郎知事とともに突如上京し、都内のホテルで3時間にわたって行われた。
「あそこで安倍首相に何かを言われたんでしょう。とにかくあの日を境に、橋下はガラッと変わった。それまでは本気で政治と距離をおいたのが、急にツイッターを再開し、安倍政権擁護、民主党批判を露骨に始めましたから」(政治評論家)
実は本サイトはこの会談で、橋下市長と安倍首相の間で密約が交わされたとの見方を紹介していた。維新の現執行部が安保法制に反対する場合は、橋下市長が大阪組に造反を呼びかけ、党を割らせる。そして、松井知事を代表に新党を立ち上げて、来年の参院選を戦い、選挙後は与党に合流する――。どうやらそれが的中してしまったということらしい。
全国紙の政治部記者もこの見方に同意する。
「シナリオを書いたのは、これまでも橋下市長に全面協力してきた菅官房長官でしょう。政党交付金をもらうために、秋に新党を立ち上げるというのもこの時点で決まっていたんじゃないでしょうか。後はどう大義名分をつくるか。そこにタイミングよく柿沢未途幹事長が党の対応を決めていない山形市長選で応援演説をしたため、辞任を要求。それが受け入れられないことを理由に離党に踏み切ったわけです。でも、あれは明らかに言いがかりです。普通は、党が対応を決めていない候補を応援した程度で辞任なんてありえない。もしそうなら、都構想を支持した菅官房長官も辞任しなきゃいけない。ようするに、現執行部は橋下さんたちに完全にはめられたんですよ」
しかし、こんな卑劣な離党劇にもかかわらず、橋下新党には維新の党からかなりの数の議員が合流するのではないかと言われている。
「橋下さんは早速、参院選で維新の党の候補に刺客を送ると脅してますからね。維新の議員たちはこれに震え上がっている。大阪組だけでなく30人以上の議員が合流する可能性が高い」(前出・政治部記者)