〈しかし、彼らがより“新しい”のは、彼らの愛国心の持ち主というレベルを超えた先鋭的な人種差別主義者や国粋主義者であり、それと同時に「お金儲けってそんなに悪いことですか?」的な徹底的な拝金主義者であるということだ〉
事実、安倍首相は富裕層からウケがいい。それはひとえに安倍首相が打ち出す税制改革や金融緩和が、富裕層や大企業を優遇する措置だからだ。安倍首相の言う「富の拡大」の実態は富める者をより富ませるものでしかないが、こうした拝金主義が愛国心と結び付いているのが現状なのだろう。
しかし、金儲けとナショナリズムが一体化した富裕層ネトウヨに対して、底辺ネトウヨは反発するどころか、同じ仲間だと喜んでいる。そう、高須院長の発言を大喜びで拡散させる人びとのように。香山氏もそうした結託を、〈「ネトウヨ思想のもとには、エリートと底辺が一枚岩になれるということか」とある種の公平さを感じてしまうことさえある〉という。
もちろん、そんなものはまやかしにすぎない。〈リアル社会では新自由主義ネトウヨたちは社会的弱者から搾取する側であり、彼らにネタを供給し続けた反知性というか無知性なネトウヨは、いざとなれば「努力しない自分が悪い」と切り捨てられるだけ〉だからだ。経済的な支配階級に全方位で搾り取られるとは、ネトウヨの運動とはなんと哀れなものなのだろう。
ちなみに香山氏は、この寄稿文のなかでエリウヨの特徴のひとつに〈反知性主義〉を挙げている。〈彼らは明らかに無知な“従来型ネトウヨ”の下劣な発言もためらうことなく拡散する〉ためなのだが、この指摘にピッタリと当てはまる高須院長は、「正論」(産業経済新聞社)8月号の「反知性主義」特集(!)にトップバッターで論文を寄せている。
常日頃、ネトウヨ言説を垂れ流して中韓へのヘイトまがい原稿を掲載し続けている“反知性主義”を代表するような雑誌が、よくも恥ずかしげもなくこんな特集を、と驚かされるが、高須院長は〈世界中の知性は、集団的自衛権を当然のことと認めているのに、なぜ日本では反知性主義と騒いでいるのでしょうか〉〈米国は日本の兄貴分みたいなもので、兄貴が攻撃されたら、弟は助太刀するのが筋〉と持論を展開した上で、最後になぜか高校時代を振り返り、こうまとめている。
〈当時、高校の柔道部員だった僕は、インテリ然として反対を叫ぶ左翼学生たちが大嫌いでした。部員達と一緒に、彼らをぶん殴っていたことを懐かしく思い出します〉
反知性主義ではないと言いながら、オチは“嫌いな奴はぶん殴る”(笑)。安倍首相が喩えでケンカ話をもち出すのが好きなように、気にくわないことがあると武力を行使するのがエリウヨというものなのか。そりゃあ反知性主義と言われるわけである。
(水井多賀子)
最終更新:2015.08.22 11:13