〈戦闘でアメリカには完膚なきほど叩きのめされたが「列強の東亜侵略百年の野望を覆す」目的は達成できた。韓国や中国に戦争で負けたわけではないのに彼らは戦勝国?彼らに対して「終戦」が相応しいと思います〉
〈韓国と中国は戦勝国ではない。虎の威をかる猿と狐である〉
〈硫黄島1つであれほどの損害をアメリカ軍に与えたのです。本土決戦になれば大本営は松代に移ります。ベトナムより善戦したでしょう〉
〈ヒトラーは無私の人。ドイツ国民が選んで指示してた。ドイツそのもの。都合の悪いことは全部ヒトラーとナチスのせいにして逃げたドイツ国民はズルい!〉(原文ママ)
日本はアメリカに善戦した、日本はアジアに侵略なんかしていない、ヒトラーは無私の人……。挙げればキリがないのだが、これだけでも十分、高須院長の“歴史修正主義者”ぶりがおわかりいただけるだろう。このような高須院長の発言にネトウヨたちは歓喜して応援コメントを送っているが、〈高須氏はネトウヨの若僧とTwitterで絡むのが趣味なんだ〉と揶揄された際には〈それは違う!わしがネトウヨである〉と堂々と自ら宣言まで行っているから恐れ入る。
ネトウヨを自称する病院経営者──この事態には世も末だと感じずにいられないが、じつのところ、こうしたエリート層のネトウヨ化、略して「エリウヨ」の存在が急増しているらしい。
ネトウヨというと、これまで「社会の底辺層」が「憂さ晴らし」としてヘイトを撒き散らしていると指摘されてきた。だが、そうではなく、「むしろ富裕層に近い(中略)新しいクラスターが現れている」と分析するのは、精神科医の香山リカ氏だ。香山氏自身もネトウヨから徹底的に猛批判を受けている人物のひとりであるが、彼女は“仕事も生活も充実している知的なドクターが中韓ヘイトなどをリツイート”している点に注目。「AERA」(朝日新聞出版)8月10日号で「拝金と愛国 結託する富裕層」という記事を寄稿したのだ。
そもそも、“ネトウヨの中心は「低学歴ニート」ではない”と指摘したのは、評論家・古谷経衡氏の『ネット右翼の逆襲─「嫌韓」思想と新保守論』(13年、総和社)だ。古谷氏はネットアンケートの結果から、ネトウヨの中心を「大都市在住の30〜40代ミドルクラス」と位置づけている。これに加えて香山氏が着目したのは、「世界」(岩波書店)12年7月号に掲載された政治学者・松谷満氏の論考「誰が橋下を支持しているのか」だ。このなかで松谷氏は、橋下徹・大阪市長を支持する層が「中高年のミドルクラス」に広がっていると解析。その背景を〈「強いリーダーシップ」「愛国心」「成長志向」への共感だとして、それを「ナショナリズムと新自由主義の肯定」とまとめている〉。
香山氏はこの「中年ミドルクラス」という一致と、アメリカの富裕層たちが「愛国的な奉仕」や「国家的な結束」を〈9・11で実現した〉例から、〈おそらくミドルクラスよりさらに富裕層に近い、外資系ネトウヨ、開業医ネトウヨなども基本的にはこの「ナショナリズム─新自由主義」スペクトラムに位置づけられるのだろう〉という。そして、このように分析する。