たとえば、米国家安全保障会議(NSC)のネッド・プライス報道官は、安倍談話発表からわずか数時間後、以下の声明を出した。
「われわれは、安倍首相が、日本が第二次対戦中に与えた被害に対する痛切な反省(deep remorse)を表明したこと、ならびに、安倍首相が日本の歴代内閣の歴史認識に関する談話を継承したことを歓迎する。また、日本が今後より国際平和と繁栄への貢献を拡大していくとしたことを評価する。戦後70年、日本は平和、民主主義、法の支配をかわらず尊重してきた。世界各国にとってお手本だ」
本当に安倍談話を聞いたのか?と思わずにはいられないほどのベタ褒めというわけだが、実は、安倍談話の作成にあたっては、事前に日米が裏で通じていたという。
安倍首相が談話を発表する4日前の8月10日、キャロライン・ケネディ駐日大使が官邸を訪れ、安倍首相と会談しているが、ここで談話の最終決定が行われたのではないかと言われているのだ。
「官邸・外務省は以前はジャパンハンドラーと呼ばれる国務省OBを通じてアメリカ政府の意向を探る形をとっていましたが、この夏以降は直接、70年談話の細部について協議を重ねていたと言われています。安倍首相とケネディ大使との会談が行われたタイミングを考えると、そこで安倍談話の内容の最終チェックと、その後の米政府が予定する声明についての確認が行われたのは明らかでしょう」(外交評論家)
このアメリカとの事前協議はテレビ朝日のニュース番組が短く伝えただけで、国内メディアはまったく報道しなかったが、70年談話はある意味、アメリカとの合作だったといってもいい。
「この談話の取り扱いを間違えたら、合意した日米ガイドライン、集団的自衛権行使が白紙になってしまう。そのために日米両政府で、安倍首相の主張を取り入れながら国際社会に非難をされないギリギリのところを探ったということでしょう」(前出・外交評論家)
そして、安倍首相は、「4つのキーワード」を盛り込むことでアメリカの顔を立てつつ、国内右派に向けては「先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と“謝罪の必要はない”と言わんばかりの歴史修正主義の姿勢を残す、得意の二枚舌作戦に出たわけである。