「確かにトートバッグのデザインを監修したのは佐野です。しかし、細かい実務を担っていたのは“部下”です。その部下たちの話を聞いた上でないと、返答はできません」
いつのまにか、佐野氏は“監修”になっているのだ。おそらく、佐野サイドはこのサントリーのトートバッグの盗用について、そのうち「部下がウェブサイトのデザインを参考にしていた」などの発表をするだろう。
しかし、それはけっして、佐野氏に責任がないということではない。むしろ、スタッフが出したアイデアやデザインを会社名でなく、トップのアートディレクターの名前で発表するというこのシステムが異常なのだ。
そして、最大の問題は、東京五輪のデザインも同じ構造から生み出された可能性が高いことだ。佐野氏自身はリエージュ劇場のロゴを見たことがなかったとしても、原案をつくったスタッフが参考にしていた可能性はある。それをたまたま佐野が気に入り、それらしい文脈を考え、コンペに出したところ、通ってしまった――。そういうことではないのか。
いずれにしても、ここまで疑惑が広がった以上、東京五輪エンブレムは国立競技場の二の舞にならぬよう、早めに白紙撤回すべきだろう。
(時田章広)
最終更新:2015.08.14 06:38