田崎健太『真説・長州力 1951-2015』(集英社インターナショナル)
先日の安倍政権支持・安保法推進デモでも「朝鮮人は半島に帰れ!」というヘイトスピーチがあがっていたことが報じられたが、国際社会からこれだけ厳しい批判を受けているというのに、安倍政権支持者による在日外国人、とくに在日朝鮮・韓国人へのヘイト攻撃は強まるばかりだ。
しかも、出自差別だけでなく、SHELLYや星田英利(旧芸名:ほっしゃん。)などのケースでも明らかなように、有名人が自分の気に食わない政治的発言をしただけで、「在日」認定というかたちで、社会から排除しようとする。
こうした差別意識は、たんにネトウヨだけにとどまらず、テレビや新聞、雑誌の保守系報道でも見られるようになり、確実に裾野を広げている。
そんな状況下、ある有名人が在日差別を受けてきた過去を告白し、注目を集めている。熱狂的な人気を誇っていたプロレスラーの長州力だ。
彼が在日韓国人2世であることはプロレスファンの間では周知の事実であったが、先ごろ出版された、ノンフィクションライターの田崎健太氏による長州力本人や周辺関係者への取材によって編まれた伝記本『真説・長州力 1951-2015』(集英社インターナショナル)のなかで、長州力自身の口から、在日として生きてきたうえでの苦悩や葛藤が語られている。
1951年12月3日、山口県徳山市(現在の周南市)で生まれた、長州力こと吉田光雄。彼の人生は少年時代から差別意識との戦いであった。