左・テレビ朝日『報道ステーション』HPより/右・「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)2015年7月号
又吉直樹が芥川賞受賞から一夜明けた今日も各界からお祝いのコメントが届くなど、お祝いムード一色だ。そんななか『報道ステーション』(テレビ朝日系)での、古舘伊知郎のある発言が大きな波紋を呼んでいる。
「すごいなとは思うんですけど、それとは別に芥川賞と本屋大賞の区分けがなくなった気がするんですけどね」
「芥川賞と明らかに、時代が違うといえばあれですけど、僕なんかの年代はあれ?って気もちょっとするんですけどね」
又吉の芥川賞受賞を報じた際、古舘はこんなふうにコメントした。この発言に、直後からネットでは「芥川賞に対しても、本屋大賞に対しても失礼」「なんで素直におめでとうと言えないのか」「どうせ読まずに言ってるんだろ」などと非難が殺到し、炎上しているのだ。
しかし、である。芥川賞と本屋大賞は、たいして変わらない。この古舘の発言は、そこまで非難が殺到するほど、おかしな発言だったのだろうか。
ここで両賞についておさらいしておこう。芥川賞は、「文學界」(文藝春秋)「新潮」(新潮社)「群像」(講談社)「すばる」(集英社)「文藝」(河出書房新社)の五誌を中心とした純文学系文芸誌に掲載された、新人の純文学作品が対象。勧進元である文藝春秋の社内選考を経て選ばれたノミネート作品から、プロの作家である選考委員が議論をして授賞作を選ぶ。昭和10年に設立以来半年に1回行われ、又吉が受賞した今回で153回を数える、日本でいちばん歴史があり、いちばん有名な文学賞だ。
対して本屋大賞は、「全国書店員が選んだいちばん売りたい本」というコンセプト通り、過去1年間に刊行された小説の単行本から、書店員の投票によって決められる。アルバイト・パートも含め全国の書店員が参加でき、まず一次投票で過去1年間の刊行作品からひとり3作品を自由に選んで投票し、その上位10作品がノミネート本として発表される。そこからさらに書店員による二次投票で大賞が決められるのだが、ノミネート全作品を読んで全作品にコメントを書いた上で、上位3作を投票するというもの。2004年に始まり、上橋菜穂子の『鹿の王』(KADOKAWA)が受賞した今年で12回目の、比較的若い賞である。